検索窓
今日:1 hit、昨日:4 hit、合計:9,944 hit

5 ページ5

『目を覚ますと、そこは知らない部屋だった。』



パチリと瞼が上がる。
と同時に、少し眩しい部屋の明かりが
私の視神経を刺激する。




木の部屋。
白いシーツを被った少し古い木のベッド。
使い古されている机や椅子。
壁にかかったコート。
あの男が着ていたコート。



手元にはあのナイフが転がっていた。




そして何より

両手両足に枷がつけられ、
足だけが壁に固定されていた。



なに、これ。



私はあの後どうなったのだろう。
ここはどこなのだろう。
どうして繋がれているのだろう。


少し引っ張ってみると、
金属の鎖がジャラッと音をたてて揺れた。



部屋をぐるりと見回しても、
特に気になるものはない。


どうしたものか、



と悩んでいると、



コツコツ



木を踏むような、そんな足音が聞こえた。
近づいてくるその音は
私の数m先にある扉の前で止まった。



ギイッと鈍い音をたてて、扉はゆっくりと開かれた。


その扉の先にいたのは、
あの赤い目の男。


あの夜の憤りが、私の体全体駆け巡った。

憎くて憎くて仕方なかった。



何も考えずに、ナイフを乱雑に掴んで
男に跳びかかろうとした。



けれど、案の定、足枷がそれを許さなかった。

足枷に足をとられた私は、
勢いよく前に倒れてしまいそうになった。




「ぅおっ!!…ふぃー危な。

まったく……君以外とそそっかしいね。」



男に体を支えられ、
男にもたれかかる状態になっていた。


触られてる。




そう考えただけで嫌な汗が流れ
鳥肌がたった。

男の人に触れることが
兄を除いてはじめてだったからか

単に男が憎かったからか。



なんにしろ、私の本能が今すぐこいつから離れろと叫んでいた。


私は男を突き飛ばしてそのまま反動で後ろに倒れ、
ちょうど後ろにあったベッドに受け止められた。



目の前の男は
少しバランスを崩したが、
平然と、何食わぬ顔でたっていた。



「お前っ……よくもお兄ちゃんをっ…よくも!


殺してやる……!!」



私がそう叫ぶと、男は、柔らかな笑みを浮かべて、
私の前に立って喋り出した。



「そっか。

じゃあ待ってる。



俺を殺してごらん。」



俺は坂田。
お前は?




そう言って男は、私の頭に手を置いた。

6→←4



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (20 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
30人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

山犬 - 面白いです!はまっちゃったかも……頑張ってください!! (2017年8月7日 17時) (レス) id: 0a1d25e071 (このIDを非表示/違反報告)
孤黒 - 好きです!はい。これからも応援していますよ! (2017年7月24日 19時) (レス) id: 2a7062127e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:わかば | 作成日時:2017年5月23日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。