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船についてから小舟をあげるのをうらさんに任せ
急いで彼女を医務室につれていく。
もう一度彼女の口に息を吹き込んで
お腹を押すと
「ゲホッ……コホッ……」
「A!!!」
彼女の目がうっすらと開いた。
大量出血で顔面蒼白、貧血になっている。
そのせいか、またぐったりと気を失ってしまった。
けれど息はしているようで、ほっと胸を撫で下ろした。
そこへ
「坂田!!」
「A大丈夫か!?」
みんながやって来た。
俺はコクリと頷いて、振りかえる。
「服ビタビタやん。さかたん着替えといで。」
まーしぃにそう言われ、俺は濡れた服を着替えに風呂へ向かった。
・
風呂から出て、医務室に戻ると
彼女と同じ血液型のうらさんが輸血をしていた。
あれ?
「……誰が服着替えさせたん?」
「ギクリ」
俺がにらみ混じりにそういうと
まーしぃが肩を揺らした。
「まぁぁああしぃいい?」
「ちゃう!!ちゃうんや、さかたん!
ほ、ほらちゃんと布団で隠してやったし……;;」
「もう、知らんからな!!」
俺だって見たことないのに……
って俺は何を考えてるんや…!
とにかくそこから輸血がある程度終わり、
みんなが部屋を出ていくまで
俺は不機嫌なまま拗ねに拗ねていた。
「じゃ、じゃあさかたん後でなー;;」
「もー、気にしやんのー。
実質誰も見とらんからさ。」
「醜いぞ坂田。」
捨て台詞がホントにイラつく。
俺は沸々とした気分を落ち着かせるため
大分顔色がもどり、規則正しく寝息をたてる彼女に視線を写した。
少し濡れた髪を撫でる。
「無防備なんだよ……もう。」
そうぼそりと呟けば、
「ぅ……ぁ、れ……。」
「A!?起きた!
大丈夫?!どこか痛いところとか、
お腹まだ痛む?!頭痛とかしない!?」
叱ることも忘れて、俺はAを揺する。
「……生き、てる……んだ。」
悲しそうに顔を歪めて、うつ向いた。
「……、なんで死のうとなんてしたの。」
「…私…は……」
気まずい雰囲気が流れて、
彼女はベッドのシーツをキュッと握った。
「ねぇ、A……?俺怒ってるんだよ?
俺らはお前が死ぬのなんて望んでないよ。」
「私がいると、
みんな、不幸になる。」
彼女は震える声を絞り出す。
そんなことない、俺はお前がいないと
ダメなんだよ。
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山犬 - 面白いです!はまっちゃったかも……頑張ってください!! (2017年8月7日 17時) (レス) id: 0a1d25e071 (このIDを非表示/違反報告)
孤黒 - 好きです!はい。これからも応援していますよ! (2017年7月24日 19時) (レス) id: 2a7062127e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:わかば | 作成日時:2017年5月23日 22時