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「バカ!!!何やって、はよ手当て…!!」


震える手で焦りながらナイフを引き抜くと
彼女は唸り声を微かにこぼした。
ビチャビチャと血が垂れる。


あの時と、陸に二人で刺されてしまった時と、
同じ感覚。

泣きそうになりながら手で傷口を押さえようとすると


「私」


かすれた声でそう呟いたAにドンッと肩を押され
反動で後ろに倒れる。


彼女は、船の摺りに背中を預けている。



嫌な予感がよぎった。
まさか、そんなことするはずない。




「坂田のこともう殺せないよ。」


悲しそうに笑った彼女の手は、摺りに掛けられ


「っ、そんなの、もう気にしなくて」

「お兄ちゃんが生きてたからじゃない。」


そのまま摺りに座った。
その時みんなが急いで駆け寄ってきた。
俺は急いで立ち上がり、手を伸ばしながら
彼女の元へ走った。

そこまで距離はなかった。けどすごく遠く感じて


「坂田が好きだから。好きになっちゃったから

もう、さよなら。」


そのまま彼女の姿は船の下に消えていった。
俺が海を見下ろした時には


彼女は海に身を投げて、
深く深く沈んでいった。

「A!!!」

「おい坂田!」


俺はみんなが止めるのもいとわずに、
コートを脱いで海に飛び込んだ。


「小舟出すから上がってこい!!!」


後ろでうらさんがそう叫んでた。



なんでこんなこと、
なんで


(俺も好きやって、バカA…… !!)



太陽の光に照らされた彼女の姿が見えた。
モヤモヤと腹から赤い霧のようなものが出ている。


ヤバイ、Aの血が足りなくなっちゃう。


必死に手を伸ばし、足をばたつかせ泳ぐ。


やっと掴んだ彼女の手は冷たくて
口から空気の泡は出ていなくて
本能的にまずい、そう思った。


急いで水面に向かう。
うらさんが乗っているであろう小舟の影を目指して必死に泳いだ。


「ぷはっ…!!A!!」

「おい坂田早くあげろ!」

急いでうらさんにAをあげてもらい
俺も小舟に乗り込む。


「おい、起きろA!A!!」


うらさんが櫂を漕ぎ、
俺は彼女の頬をペチペチ叩く。

息してない。
そう察したとき、
俺の顔がさあぁっと青くなっていくのを感じた。


俺は羞恥心も忘れて彼女の口に息を吹き込んだ。


つまりは、そういうことで。


傷口を避け、彼女のお腹を押す。
人工呼吸というやつだ。



「死ぬな…!!」

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山犬 - 面白いです!はまっちゃったかも……頑張ってください!! (2017年8月7日 17時) (レス) id: 0a1d25e071 (このIDを非表示/違反報告)
孤黒 - 好きです!はい。これからも応援していますよ! (2017年7月24日 19時) (レス) id: 2a7062127e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わかば | 作成日時:2017年5月23日 22時

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