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「落ち着いた？」
「うん、ありがとう坂田。」
一定のリズムでポンポンと撫でてくれた
あの後、兄がどうなったかは知らない。
だけど今はそんなことどうでもよかった。
兄は私を愛してくれていないと知ってしまったから
あの時から私は兄のものじゃなくなったんだ。
私の命は、
「もう坂田のものだから。」
その声が坂田に届くことはなくて、
もう坂田が病室を出た後だった。
・
「ッ…、ばかA」
全部、聞こえてるし。
病院のロビーの椅子に腰かけると
抑えていた顔の火照りが襲う。
「さかたん初々しいな。」
そこにやってきたまーしぃが俺の隣にドスンっと座った。
「何が。」
「わかっとるくせにぃ、かわええなぁもう。」
「うっさい。」
はぁ、とため息をついた志麻。
深く息を吸い込んだ彼はこう続ける。
「さかたんはさ」
「陸があの時Aのことを口封じに殺そうとしてたから
陸を打った事、いつAに言うつもりなの。
あのままだったらAの臓器は
陸のギャンブルの為の金に変わってたって。」
「ッ、それは」
まーしぃに、というか、うらさんにもセンラにも
もうバレてる。
俺がわかりやすすぎる所為なんだけど。
俺のAに向けた気持ちも多分気づいてないのは本人だけ。
「まさか、ずっといわんつもりとちゃうよな？」
図星だった。
Aが傷つくのは嫌だ。
それがどんな形であろうと、何が原因であろうと、
彼女の苦しむ姿を見ているのは、俺にとってはどんな拷問よりつらい。
「だって、Aは何も悪くないから。」
「そう。さかたんがそうするつもりならこっちにだって考えがあるよ。」
そう言って立ち上がった志麻の顔は見えなくて、ただ背中が物語っていた。
本当にこのままでいいのか、と。
それでも彼女は、まだ弱すぎる。
・
落ち着いてきたので、
もう一度彼女の病室に行ってから夕飯でも食べに行こうと
まだどくどくと脈を打つ心臓を抑えて、歩き出した。
彼女の病室にたどり着きドアを開けようと手をかけたその時
「お前に話しておかなきゃいけないことがある。」
うらさんの声が彼女の病室から聞こえた。
気配からして志麻センラも一緒だ。
「お前の兄貴は、」
やめろうらさん。
その先を言うな。
「あの夜お前を」
やめろよ。
急いでドアを開けて叫ぼうと口を開いたときには
「殺そうとしたんだ。」
「やめろ！！！」
もう遅かった。
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山犬 - 面白いです！はまっちゃったかも……頑張ってください！！ (2017年8月7日 17時) (
レス) id: 0a1d25e071 (このIDを非表示/違反報告)
孤黒 - 好きです！はい。これからも応援していますよ！ (2017年7月24日 19時) (レス) id: 2a7062127e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わかば | 作成日時：2017年5月23日 22時
