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兄が何か呟いて話にけりをつけ、こちらに向かって歩いてきた。
そのとき兄は、
羽織っていたオーバーコートに手を突っ込んで
何かを探していた。何かはわからない。
「オイ、待て。」
兄と話していた男がそういって兄の首筋に
いつの間にか抜いた刀の刃を向けていた。
「なんだよ坂田。
後始末は俺がやっておくって。」
「そういう問題やない。
それに、これは俺たちには
関係のないことだったはずや。
勝手に俺たちを巻き込んでなんのつもりや。
お前何が目的や。」
男と兄の会話の意味がわからないまま
私は初めてみる包丁以外の刃物に恐怖を抱いて
危ないとわかっていても足が動かないでいた。
「だから、お前らとはもう切るって。
迷惑かけたな。
俺が巻いた種だ。片付けは確実にやる。
が、お前たちの情報は俺の頭の中だ。
忘れるなよ。」
ニヤリと怪しげに、ふくみのある顔で笑った兄は靴をならし近づいてきた。
怒られ…ちゃうなぁ……。
「ッ………お前それでも……
兄貴かよ……！」
パァンッ
目の前で起こった悲劇に
一瞬
頭の中が真っ白になった。
え…？
数秒間頭が回らなくて、
遅れて何が起こったかを頭が理解してしまう。
そんな
こんなことってない。
これは悪い夢だ。
やめて、
早く覚めてこんな悪夢。
そんな、お兄ちゃん、
お兄ちゃんが赤い液体で包まれていく。
お兄ちゃんのコートを赤く染めていく。
少し焦げくさい臭いが辺りを覆った。
男の銃だ。
私は状況を理解した。最悪の状況。
「……！」
殺される。
私は自分の口を両手で塞いで、
目からボロボロととめどなく溢れてくる涙を
ぬぐうことなく、
あの男を睨み付けた。
憎い、憎悪。
汚い感情が私を支配した。
はじめて人に抱いた殺意。
はじめてお兄ちゃん以外の人に抱いた感情。
男は、悲しそうな、悔しそうな顔で、
兄を射抜いた銃を下ろした。
はぁはぁと息を荒くして、こちらを見ていた。
気づいてる。
それならもういいや。
「お兄ちゃんっ！！」
私は兄のもとに駆け寄った。
兄は浅い呼吸を繰り返していた。
まだ間に合う。
私は急いで、
本で読んだ浅はかな知識で応急処置を始めた。
けれど兄の血液と思われるものは
どくどくと溢れて、
止まることを知らない。
止まって、止まってよっ！！！
私は兄の側にへなへなと座りこんだ。
いやだ
嫌だよっ！！
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山犬 - 面白いです！はまっちゃったかも……頑張ってください！！ (2017年8月7日 17時) (
レス) id: 0a1d25e071 (このIDを非表示/違反報告)
孤黒 - 好きです！はい。これからも応援していますよ！ (2017年7月24日 19時) (レス) id: 2a7062127e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：わかば | 作成日時：2017年5月23日 22時
