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「坂田終わった」


隣の部屋の扉の前にたってそう呟けば
ゴソゴソと中から服の擦れる音が聞こえた。


「ん、待って。俺もすぐ終わる。」


そう坂田が言った数分後、

扉が開いた。
その瞬間を見計らって手に持ったナイフを
後ろにおもいっきり旋回させる。


「はい残念。」


それも案の定簡単に止められてしまう。
私のナイフは坂田ではなく
すぐ横の木製扉に刺さった。

軽く舌打ちを溢すと、
コラ、とデコピンされた。


「はいはい、寝るよ。」

坂田は私の後ろに立って
先程の部屋に向かいながら背中を押す。
されるがままに部屋に入りベッドに横になる。


軋むベッドの木に重いのかなと心配しつつ、
枕に頭を落とすと、


ふわりと漂う坂田の匂い。
まるで日溜まりの中にいるような匂い。

「ん、……」


意識がだんだんと朦朧としてきて
それに拍車を掛けるように
坂田が私の頭を優しく撫で始める。


ゆっくり、
ゆっくり、
一定のリズムで
優しく。


最後に坂田が私の頭に触れたときから
意識が投げ出されて、記憶はない。




ふわふわした、夢を見た。



「……A。」


聞き覚えのある

どころか、
私の大好きな声。
優しくて
落ち着きが戻ってくる声。


「お兄ちゃん!!」


大好きな兄の声。
ずっと聞きたくて仕方なかった
会いたくて恋しくて堪らなかった
兄の声だ。


「はははっ、どうしたの?
今日は甘えたなの?」


いても立っても要られず
兄に抱きつく。
そうすれば優しく頭を撫でてくれる。

そして抱き締め返してくれる。


「お兄ちゃん、大好き……。」




無意識にこぼれた、
羞恥心を捨てたような自らの発言に
恥ずかしさが込み上げて
耳まで赤くして、
顔が赤いのが自分でもわかるほどだった。

見られるのも恥ずかしいので
兄の胸に顔を押し付ける。



これはこれで幸せだ。


「まったく、俺もだよ。」


優しく笑う兄が好きです。
大きくて暖かい兄が好きです。
抱き締めてくれる兄が好きです。


家族愛。
恋愛感情でないそれは、
兄に向ける愛を形容するのに一番匹敵する言葉。


この先も、ずっとずっと



兄のことが大好きだ。



この夢、覚めなければいいのにな。



そんな思いもむなしく、
明るい光に引っ張られるように
意識がもとの世界へと引き戻されていった。

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山犬 - 面白いです!はまっちゃったかも……頑張ってください!! (2017年8月7日 17時) (レス) id: 0a1d25e071 (このIDを非表示/違反報告)
孤黒 - 好きです!はい。これからも応援していますよ! (2017年7月24日 19時) (レス) id: 2a7062127e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:わかば | 作成日時:2017年5月23日 22時

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