2 ページ33
・
「亮平！」
間一髪倒れる前に
亮平を抱きかかえる。
「…っ、ごめ、…なさい…っ、」
「大丈夫、俺は怒ってないよ」
俺の腕の中でパニックになりかけている亮平を必死で宥める。
ぐったりとしていても尚ごめんなさいと繰り返す弟の姿に心が痛む。
いきなりのことに驚いた兄ちゃんたちが慌てて近寄ると
それを亮平は拒むように俺の服をぎゅっと掴んで
目に涙を溜めながらがたがたと震え出した。
「…離れて」
「えっ、」
「いいから亮平から離れろ！」
ただ事ではない様子に危険を感じた俺は
兄ちゃんたちから亮平を引き離して
なんとか担いで俺の部屋へと連れて行った。
亮平の部屋にしなかったのは
他の兄弟たちを部屋に入れないため。
亮平が体調を崩したと聞けば
事情の知らない弟たちは亮平の部屋へ行くはずだし
もし俺の部屋にいると分かっても
勝手に入ることはないだろうと考えてのこと。
なんとか落ち着かせて寝たのを確認してから
俺は一旦リビングへと戻った。
「翔太…」
「勝手に亮平のとこ行くなよ」
「っ、ごめん」
「何に対して謝ってんのか知らねえけど、」
弟のことなんだからちゃんと考えろよ。
兄ちゃんたちに放った言葉は
そのまま自分に向けた言葉でもあった。
あの時亮平に任せなければこんなことにならなかった。
あの時亮平の顔をよく見ていれば顔色が悪いことに気づけたはずだった。
天気が悪い日が続くと気圧の影響で調子が悪くなることは周知の事実なのにも関わらず
そんな日が続く事の辛さを一番よく分かっているのは自分であるにも関わらず
俺だってちゃんと見ていなかったのだ。
「俺が亮平みるから、頭冷やせよ」
そう言い放って亮平の元へと急ぐ。
俺にも大概責任はあるが
それ以上に今の亮平には俺が必要なのだという自負もあった。
部屋のドアを開ければ希望的観測だったそれは確実へと変わった。
俺を求めて泣く亮平がベッドの上にいたのだ。
「亮平、」
優しく声を掛けて近寄れば一瞬ビクッとしたけど
俺だとわかると嬉しそうに手を伸ばしてくるので
俺も嬉しくなって手を広げて抱きついた。
「ごめんな、兄ちゃん気付いてやれなくて」
「んーん、俺が悪いの」
頬に流れた涙を拭えば
照れたようにぐりぐりと胸に頭を押しつけてきた。
かと思えば急に静かになるから名前を呼べば微かに聞こえる声。
「頭痛い？」
「んー…」
ちょっと寝ようよと布団を掛けると
兄ちゃんも、だって。
これは長い闘いになりそう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1056人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
呉葉(プロフ) - ききさん» ききさんに作品を知っていて頂けたこと、とても光栄です。まさか読んで頂けていたとは…。こちらこそいつもありがとうございます！ このご時世ですので、どうかお体に気をつけてお過ごし下さい。 (2020年6月7日 14時) (
レス) id: 676d38c831 (このIDを非表示/違反報告)
きき(プロフ) - 呉葉さん» 「深澤家の兄弟」の作者様ではないですか…！いつも楽しみに読ませていただいてます。書くたびに試行錯誤していたのでそう言っていただけると本当に嬉しいです。また楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2020年6月7日 14時) (レス) id: e52f10bd3d (このIDを非表示/違反報告)
呉葉(プロフ) - 完結おめでとうございます。いつも更新を心待ちにして拝見しておりました。設定やタイトル、心情表現などどれも素敵で読み返して何度も楽しませて頂きました。またどこかでききさんのお話に巡り会えることを楽しみにしたいと思います。お疲れ様でした。 (2020年6月6日 18時) (レス) id: 676d38c831 (このIDを非表示/違反報告)
緑茶.(プロフ) - ききさん» 読んで頂いてたのですか！！？まさかすぎてビックリしました…こちらこそ大好きな作者様に言っていただけて光栄です(><)家宝にします！！← (2020年6月6日 18時) (レス) id: da9b62ff0c (このIDを非表示/違反報告)
きき(プロフ) - 緑茶.さん» 緑茶.さん？まさか、と思って見たらそのまさかでした。「道化師の瞳」「約束のしおり」をずっと読ませていただいてて、「Snow短編集」もいつも楽しみにしてます！そんな好きな作者の方にこうやって言っていただけるのは嬉しい限りです。本当にありがとうございます！ (2020年6月6日 0時) (レス) id: e52f10bd3d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きき | 作成日時：2020年5月5日 13時
