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俺の悪い予感は当たってしまった。
それは夜みんなが寝静まった後のこと。
昼間に少しお昼寝をしたからか全く寝付けなくて
気分転換にもでもと水を飲みに行こうとした時だった。
ドタッ
と急に何かが落ちたような音と
「……っは、…ぁ……ぅ、」
微かに聞こえる誰かの声がした。
耳を澄ませばそれが段々と苦しそうな呼吸音に変わっていくのが分かり
それと同時に俺は声の持ち主の元へ急いで向かった。
「亮平！！」
勢いよくドアを開けるとそこには
ベッドの側で横たわって必死に胸の痛みに耐えている亮平が。
「亮平、わかる？兄ちゃんの手握ってみて」
意識があるか確認するために無理やり手を滑り込ませれば
かろうじて握り返される。
「ん、大丈夫大丈夫」
根拠のない無責任な言葉だけど
半分は自分を落ち着かせるため。
ここで俺が焦ってもだめだから。
片方の手は亮平と繋いだまま
もう片方の手で薬を探す。
暗い部屋の中しゃがんだ状態ではどこにあるか見つからなくて
どうしようかと頭を悩ませようとしたとき。
「兄ちゃん？」
「大介」
救世主登場。
「ちょうどよかった、薬取ってくれない？」
「了解、……あっ、これだね」
大介のおかげで案外早く薬が見つかって。
「りょーへ、ちょっと口開けて、」
薬を飲ませて少しすれば段々落ち着いてきて一安心。
亮平に負担をかけないように
そっと2人でベッドに運べば
亮平の顔が少し緩んだ気がした。
汗でびっしょりになった前髪をおでこから剥がして
顔をタオルで拭いてやれば
いつの間にか開いた目がゆらゆらと俺らを捉えた。
だけど夢と現実の間を彷徨っているのか
ふわふわとした様子に
耐え切れなくなってそっと頭を撫でる。
くすぐったかったのか
それとも胸がまだ痛むのか
顔にきゅっと皺を寄せた亮平を見かねて
大介が優しく胸に手を置いた。
「いつまで経っても亮平は俺らの弟でやんすねー」
にゃは、と笑った大介は兄の顔をしていて
亮平を寝かしつけるために
胸に置いた手をリズムよく動かし始めた。
そんな2人を微笑ましいななんて思いながら見ていれば
俺もつられてそのまま寝てしまった。
「あ゛ー、いってえ！」
「辰哉兄ちゃん、やっぱり歳だね」
朝起きたら身体がバキバキになっていて
随分元気になった亮平に笑われたのは
言うまでもない。
『暗夜の中の灯火』 fin.
＿＿＿＿
桜餅 様リクエストありがとうございました！
例え浮世は夢であろうと（Req）【康二】→←暗夜の中の灯火（Req）【亮平】
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呉葉(プロフ) - ききさん» ききさんに作品を知っていて頂けたこと、とても光栄です。まさか読んで頂けていたとは…。こちらこそいつもありがとうございます！ このご時世ですので、どうかお体に気をつけてお過ごし下さい。 (2020年6月7日 14時) (
レス) id: 676d38c831 (このIDを非表示/違反報告)
きき(プロフ) - 呉葉さん» 「深澤家の兄弟」の作者様ではないですか…！いつも楽しみに読ませていただいてます。書くたびに試行錯誤していたのでそう言っていただけると本当に嬉しいです。また楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2020年6月7日 14時) (レス) id: e52f10bd3d (このIDを非表示/違反報告)
呉葉(プロフ) - 完結おめでとうございます。いつも更新を心待ちにして拝見しておりました。設定やタイトル、心情表現などどれも素敵で読み返して何度も楽しませて頂きました。またどこかでききさんのお話に巡り会えることを楽しみにしたいと思います。お疲れ様でした。 (2020年6月6日 18時) (レス) id: 676d38c831 (このIDを非表示/違反報告)
緑茶.(プロフ) - ききさん» 読んで頂いてたのですか！！？まさかすぎてビックリしました…こちらこそ大好きな作者様に言っていただけて光栄です(><)家宝にします！！← (2020年6月6日 18時) (レス) id: da9b62ff0c (このIDを非表示/違反報告)
きき(プロフ) - 緑茶.さん» 緑茶.さん？まさか、と思って見たらそのまさかでした。「道化師の瞳」「約束のしおり」をずっと読ませていただいてて、「Snow短編集」もいつも楽しみにしてます！そんな好きな作者の方にこうやって言っていただけるのは嬉しい限りです。本当にありがとうございます！ (2020年6月6日 0時) (レス) id: e52f10bd3d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きき | 作成日時：2020年5月5日 13時
