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それから翔太兄ちゃんの顔色は良くなっていって
言った通り俺の出る幕はほとんどなかった。
「37.7度、結構下がってる」
「熱に慣れると微熱なんかほぼ平熱って感じじゃない？」
「うん、確かに」
寝過ぎてもう眠れないって言うから
俺は勉強道具を置いて話をすることにした。
翔太兄ちゃんと俺しか分からない話とか
兄弟についての話とか。
普段は特別よく話すわけでもないから
なんだか新鮮で楽しかった。
「ただいまー…おっ、もう元気なんだ」
そうこうしているうちに時間も経っていて
やっと辰哉兄ちゃんが家に帰ってきた。
随分と回復した翔太兄ちゃんを見て嬉しそうに目を細め
それから辰哉兄ちゃんは俺の頭を撫でた。
「ありがとう、亮平」
「別に、大したことしてないよ」
そうは言ったものの
内心はとても照れ臭かった。
晩ご飯になって
俺は頼み込んで翔太兄ちゃんの部屋で食べる許可を得た。
兄ちゃんたちがやってていつも羨ましかったから
やっと少し大人になった気分が嬉しくて嬉しくて。
「亮平、食べないの？」
「え？あー…いや、食べるけど、あんまりお腹空いてなくて」
翔太兄ちゃんに言われるほど食欲もなくて
やはり体調が優れないことは分かっていたけど
夜ちゃんと寝たら、明日は大丈夫だろうなんて楽観してた。
…だけどそんなに事は上手く進むはずがなかった。
「ん、…っは、！」
夜自室のベッドで寝ていると
急な息苦しさに無理やり起こされた。
痛くて、苦しくて。
もう今日だけで何回も味わったけど
この辛さはいつまで経っても慣れることはない。
「…ふ、…ぅ、はっ、…」
やっぱり我慢したから良くなかったんだ。
人の役に立ちたい、って
こんな出来損ないのくせに望んで
少しの犠牲ぐらいなんて事ないって強がって。
どう頑張っても足掻いても
兄ちゃんたちみたいに強くなれないのに
どっかで夢を見ている自分がいた。
だから頼ってもらえたって思った時は嬉しくて
喜んでもらえたって舞い上がっていた。
そしてそのツケが今こんな形で返ってきたのだ。
「…なん、でっ…」
なんで俺は人のために生きていけないのか。
ずっとずっと思いながらここまで来た。
『人は支え合って生きていくんだよ』
昔母親に言われた言葉。
困っている人に手を差し伸べれば
自分が困ったときに誰かが助けてくれるって。
…じゃあ俺は？
必死の思いで兄ちゃんに電話を掛けながら思う。
“亮平？”
ああ、また俺は人に頼ってばかりなんだ。
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呉葉(プロフ) - ききさん» ききさんに作品を知っていて頂けたこと、とても光栄です。まさか読んで頂けていたとは…。こちらこそいつもありがとうございます！ このご時世ですので、どうかお体に気をつけてお過ごし下さい。 (2020年6月7日 14時) (
レス) id: 676d38c831 (このIDを非表示/違反報告)
きき(プロフ) - 呉葉さん» 「深澤家の兄弟」の作者様ではないですか…！いつも楽しみに読ませていただいてます。書くたびに試行錯誤していたのでそう言っていただけると本当に嬉しいです。また楽しんでいただけるよう頑張ります！ (2020年6月7日 14時) (レス) id: e52f10bd3d (このIDを非表示/違反報告)
呉葉(プロフ) - 完結おめでとうございます。いつも更新を心待ちにして拝見しておりました。設定やタイトル、心情表現などどれも素敵で読み返して何度も楽しませて頂きました。またどこかでききさんのお話に巡り会えることを楽しみにしたいと思います。お疲れ様でした。 (2020年6月6日 18時) (レス) id: 676d38c831 (このIDを非表示/違反報告)
緑茶.(プロフ) - ききさん» 読んで頂いてたのですか！！？まさかすぎてビックリしました…こちらこそ大好きな作者様に言っていただけて光栄です(><)家宝にします！！← (2020年6月6日 18時) (レス) id: da9b62ff0c (このIDを非表示/違反報告)
きき(プロフ) - 緑茶.さん» 緑茶.さん？まさか、と思って見たらそのまさかでした。「道化師の瞳」「約束のしおり」をずっと読ませていただいてて、「Snow短編集」もいつも楽しみにしてます！そんな好きな作者の方にこうやって言っていただけるのは嬉しい限りです。本当にありがとうございます！ (2020年6月6日 0時) (レス) id: e52f10bd3d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きき | 作成日時：2020年5月5日 13時
