5 ページ42
・
「辰哉兄ちゃん、ご飯できたけど」
「後で食べるから置いといて、ありがとう」
仕事を休んで翔太といることにした涼太だけど
学校や仕事に行く兄弟のためにご飯はちゃんと作ってくれた。
康二が代わりにやるって言ってくれてたけど
料理を作っていると落ち着くらしく
結局いつものように一人で作ったみたい。
「いただきます！」
「蓮、溢してる」
「うまぁい！」
多分野菜のスープなんだろうけどすっごい良い匂い。
俺も食べたいのは山々なんだけど
なんせこの状態の翔太から離れるのは気が引ける。
「あ、翔太、起きた？」
「ん…はぁ、」
少ししてさすがに騒々しく感じたのか翔太の目が薄っすらと開いた。
「もう気持ち悪くはない？」
そう声を掛ければ頷く翔太。
吐き気がないとすれば
次に息の荒さが少し気になった。
「はぁ…っ、はぁ、」
「しょーたー、ゆっくり息してごらん。すー、はー、」
「っ、は…はぁっ…」
「翔太、俺の真似して、吸ってー、吐いてー」
しんどさに耐えかねて過呼吸ぎみなのかと疑って
息の仕方を指示してやるが一向に良くならない。
「っ…んは、はぁ…っ、」
「しょーた？どうした、どこがしんどい？」
眉間にシワを寄せて苦しそうに息をしている。
俺からは見えないけど
多分みんなご飯を食べる手が止まっていて
翔太を心配そうに見ているんだと思う。
それほど家の中は静寂に包まれていて
聞こえるのは翔太の呼吸音と焦る俺の声だけになっていた。
段々息が乱れてくる中
翔太はきゅっと自身の左の胸を掴んだ。
そのとき俺ははっとした。
この呼吸の仕方にこの姿勢
…もしかして。
「翔太兄ちゃんっ！」
「亮平、大丈夫だから、」
そうだ心臓だ、心臓発作だ。
俺はすぐさま大介に救急車を呼んでもらい
そして翔太が意識を飛ばさないように声を掛け続けた。
「翔太、もう少しだけ頑張ってくれ」
今まで嫌というほど見てきたはずなのに
人が変わっただけで弟の異変にすぐに気づいてやれなかった。
そんな後悔とこれ以上翔太を苦しめないでという願いと
ぐちゃぐちゃな感情を持ちながら俺は弟の名前を呼び続けた。
救急隊の人が到着してからはさらに大変だった。
翔太についていくと言って聞かない涼太を宥め
自分と同じように発作で運ばれていく様子を見てパニックになった亮平を照に任せ
下の子たちはショックだろうけどなるべく学校に行かせるように大介に頼んで
俺は翔太と病院へ向かった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 968人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
yuki(プロフ) - リクエスト失礼します。翔太くんがストーカー被害にあい、心配をかけまいと誰にも相談できず、結果、体調を激しく悪化&怪我をしてしまう→涼太くんが助ける話をお願いします。 (2020年6月15日 1時) (
レス) id: 3f1312ed68 (このIDを非表示/違反報告)
きき(プロフ) - 桜餅さん» リクエストありがとうございます。阿部ちゃんメインのお話でよろしいでしょうか？ (2020年4月25日 0時) (レス) id: c7b838e2cf (このIDを非表示/違反報告)
さくら(プロフ) - ありがとうございます。また書いて頂けると嬉しいです。 (2020年4月24日 7時) (レス) id: 137beba8ce (このIDを非表示/違反報告)
桜餅 - リクエスト失礼します！元々熱があって、弱っているところでさらに夜中に発作がでてしまい、苦しんでいるところにさっくんとふっかが飛び起きて駆けつけて看病する話がみたいです！文章下手ですいません…おねがいします！ (2020年4月23日 14時) (レス) id: 0d1b3f2f8c (このIDを非表示/違反報告)
アイ(プロフ) - 翔太くんの小さい頃のエピソードが読みたいです。 (2020年4月10日 10時) (レス) id: 3ca86cd523 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：きき | 作成日時：2020年3月18日 22時
