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太宰が笑むと同時に国木田さんが立ち上がる。
椅子が勢いに耐えかねて音を立てて倒れる。
国木田さんは顔を青くして「真逆」と呻いた。
「谷崎、籤を開いてみろ!」
国木田さんの鬼気迫る表情に押された様に谷崎くんは慌てて籤を開く。
数字は___『1・2』
「な___ 」
勢いよく顔を青くする谷崎くんを見て太宰はにっこり微笑んだ。
「これは僥倖。籤の神様とは悪戯なことをされるものだ。真逆私より小さい数字をここで引かせてくるとは___谷崎君、ついてないねえ」
呆然と太宰を見つめる谷崎くんに声をかける。
「谷崎くん!!日付確認、早く!」
私の声を聞きはっとしたように慌てて日付確認をし始めた。
何も言わないことから使用した古新聞は谷崎くんが籤作りに使ったものと同じなのだろう。
「こンなことが____ 」
谷崎くんが思わず、といった様子で呟く。
しばらく考え込む様子を見せた谷崎くんははっとナオミちゃんを見る。
つられてナオミちゃんを見ると
「だってぇ......」
与謝野さんと賢治くんも私と同じ物が見えているのだろうか。
私にはナオミちゃんの瞳にハートマークが浮かんで揺れるのが見えた___気がする。
ナオミちゃんはほんのり蒸気させた頬を細い指で押さえながら言った。
「人質になって...兄様に拘束されたり脅されたり、したかったんですもの」
それを聞いた谷崎くんは脱力してへなへなと座り込んだ。
その時私は___
ナオミちゃんが言い終える前に賢治くんの耳を塞いだ←
賢治くんにはまだ早い、うん。
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