九十四話 ページ20
そして、2年
この2年間は何も変わり映えのしない、色もなく温度もないものだった。
訪れた島の住人と仲良くなれば、その町は炎に包まれ、
町に被害はなかったとしても、懸賞金目当てでAの居場所を海軍に通報され、直ぐにまた島を離れたり。
なかなか捕らえることの出来ないAに、懸賞金がかかっていた。
それにより以前と比べるとAと接してくれる人が少なくなった。
より一層、人を信じることは出来なくなっていた。
唯一、信じていたものは、自分、たったひとりだった。
逃げても逃げても、何をしていても死ぬことの出来ないAは、自分にとても大きな嫌悪を抱いていた。
そんなある日
Aは島に着いて少し散策をしていると、お爺さんが倒れているのを発見した。
Aは最初、放っておこうと考えた。
どうせ、親切にしたところで自分を怖がり追い出すのだから。
だが彼女は見捨てることが出来ず街へと運ぶことにした。
町に着くと、そこは閑静な町で他国では戦争が起きているようにも思えない、平和がそこには広がっていた。
とりあえず大きな建物、もしくは病院にと思い、お爺さんをおぶって歩いていると町の人に声をかけられ案内された。
案内されたのは少し小さめのレンガ造りの家だった。
そのお爺さんを運んで、一応意識を取り戻すまではこの島にいようと考え、何も考えず座っていた。
すると、数人の町民に声をかけられた。
｢あの...タオベさんを助けて下さったのはあなたですか？｣
『助けると言うほどのことはしておりません。倒れていたのを見つけて運んで少し看病をしていただけで...』
｢今、この町には医者がおりませんので看病までしていただけたなんて...頭があがりません｣
『いえいえ、出来るだけのことはしましたので、この方の意識が戻り次第、私は失礼させてもらいます』
｢な、何故ですか！お礼を...させて下さい！この方はここの町長なのです。こんな小さな町が平和で過ごせているのはタオベさんのおかげなのです｣
『いえ、私は...あなた方と関わっていいような人間じゃない』
｢そこをなんとか！！｣
｢なんじゃい...騒がしいのう｣
｢タオベさん！｣
町民たちが目覚めたタオベの元に集まっている隙にAは外に出ようとする。
｢待つんじゃ｣
が、一つの声によってそれは阻まれてしまった。
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作者名：つんてん | 作成日時：2022年11月3日 19時
