九十話 ページ15
何とか部屋の前に着いたAは、同じようにノックをし部屋へと入る。
エリザベスとのゲームはいつも楽しんでやっていたが、さすがにこの時は気丈に振る舞うことは出来なかった。
｢...A、あなたの番よ｣
『えッ、はい』
｢どうしたの？さっきからうわの空じゃない｣
『わ、私は大丈夫です。お気になさらず』
｢気にしたくなくても、そんな顔じゃ気になって仕方ないのよ、私には話しずらい？｣
この時、Aは何も答えることが出来なかった。
唯一、思考の合う人物であったのにも関わらず、Aは一人で抱え込んでしまった。
エリザベスは俯いたまま何も答えないAに、少し間を置いて今日は帰っていいと言い、Aは部屋を後にした。
数日後＿＿＿＿
またエリザベスが居る居住地での仕事となった。
Aの心情はあの時から良くなるどころか、塞ぎ込んでしまっている状態だった。
暗い表情を隠しきれず、エリザベスと対面する。
彼女はAの身に何があったのかは、親に聞いてすぐに分かったそうだ。
Aの父と母を殺めたのは、エリザベスの父だった。
朝食の時間が遅れた上に、メニューの不満もあったそうで怒りに触れてしまい...
エリザベスは親から話を聞いて、大きな怒りと後悔を感じた。
だがエリザベス自身も天竜人。
同じ種族で血の繋がっている者の行為だと思うと、何とも惨めで憎たらしい感情を覚えた。
エリザベスは、Aに自分の親と会うことがないように気を配っていた。
きっと、殺したヤツの顔は覚えているに違いないから。
それから数ヶ月後の話
Aが以前よりは話すようになり、エリザベスは僅かながら安心していた。
今は2人で紅茶を飲みながらお話をしている。
＿＿＿だが、もうそんな日常は突然と終わりを迎えてしまう。
エリザベスの父が、エリザベスに用があったようで部屋に入ってきた。
いつもなら入ってくることのないはずの人物が現れたことに2人とも驚いた。
早く部屋から出そうとエリザベスは父の元に駆け寄った。
｢お父上様、どうかされましたか？｣
｢わしの本を知らんかえ？表紙は茶色で分厚い本なのだが...｣
エリザベスは父を早く部屋から出したい一心だったが、父は隅々まで探さないと気が済まないようでこの部屋を彷徨く。
｢うむ...あッそれは！！｣
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 138人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：つんてん | 作成日時：2022年11月3日 19時
