明日の天気は晴れですか？【特撮短編集】

今日も明日もこの先も / 桜井景和 ページ35

・

「かんぱーい！」


並々とビールを注いだグラスをぐいっと傾ければ程よい爽快感が喉を通過した。

期待に満ち溢れた心に従うように机へと箸を動かせば、チーズやかまぼこ、生ハムなど、お酒がすすみそうな品々で思わずごくりと喉を鳴らす。

「どれも美味しそう〜！準備してくれてありがと、景和」

「いいよ、そんな感謝なんて」

「年越しそばは私に任せて」

「お、楽しみにしてる」

褒められれば照れくさそうに笑いながら枝豆へと手を伸ばす景和。

私も生ハムをとって食べれば程よい塩味が口の中を満たした。チーズを巻いて食べても美味しいかもしれない。

「それにしても1年お疲れ様」

「いやほんとに大変だったよ……」

「景和は就活あったもんね」

「あー…まぁそれもあるけど」

「ん？どうかした？」

景和はごにょごにょと言いにくそうに言葉を淀んでいる。
どうしたんだろう、就活頑張ったのに上手くいかなくて落ち込んでるのかな。たしかに今年の後半は、景和忙しそうでデートもほとんど行けてなかったしなぁ。

「いや、なんでも！それより今年1年あっという間だったよね」

「ほんとに、12月とか秒だったもん」

「でも、来年も再来年もその言葉言い合うんだろうな〜」

歳とるのってほんとにはやすぎる…なんて地味にショックを受けている景和。

来年も再来年も言い合うって、それってこれからも私と一緒にいてくれるってことだよね。彼のプロポーズみたいな言葉に思わず口元がニヤける。ぽかぽかとした幸福感が全体を包み込む。


……うれしいなぁ。


「どうかした？｣


「！な、なんでも！そろそろ年越しそばの準備してくるね」

「やった、俺たぬきそばね！」

「はいはい、私は、きつねそばにしようかな」

「……きつねそば？」

「え、うん、そうだけどどうかした？」

「あ、いやううん！気にしないで」

「？変な景和」

何かを言い淀んでる景和を不思議に思いながらも幸福感で赤くなっているに違いない顔がバレないように彼へ背を向けてちょっと予定より早めの年越しそばの準備へと向かった。



＿＿＿


＿



「きつねそばで英寿くん思い出して思わずやめて欲しいって言いそうになるのはさすがにダメだろ俺……」

はぁ、とため息をつく。

「……来年はもっと余裕をもてる男になりたい｣

英寿くんに余裕のもち方とかきいてみようかなぁ。

酔いどれ知らず / 吾妻道長→←Xmas painted red / 城戸真司

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す