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ガラリ、と突然扉が開かれる。思わぬところから発せられたその音にびっくりして、勢いよくそちらの方へ顔を向けた。
「えっ」
「え」
そこには一輝くんが立っていた。ブラシをもっており、掃除をしにきたということがわかる。
目と目が、あう。
驚きに満ちた表情のまま固まる一輝くん。
カラリ、とブラシが落ちる音がした。
静寂があたりをつつむ。お互いが固まって何分すぎたのだろうか、いや数秒しかたっていないかもしれない。この空間だけ時が止まっているかのような、そんな感覚が私を支配する。
目の前の彼はまだ動き出す気配がない。
そ、そろそろ恥ずかしいからでていってほしいんだけどな。
「い、一輝くん?」
「っ!ごめん!」
恐る恐る声をかけると白い肌を真っ赤に染めて大きな声で謝ると同時に持ってきたブラシを置き忘れるぐらいの慌てっぷりで勢いよくバタンと扉を閉めた。
さくら!と呼んでいる声が微かに聞こえる。
わたしがいること、知らされてなかったのかな。
申し訳ないことをしたな、という罪悪感とすっぴんだしタオルを巻いているとはいえ裸だったという恥ずかしさがごちゃごちゃに混ざりあって私の胸の中をかき乱す。
赤くなった頬を隠すためにぶくぶくと浴槽へ顔をつけた。
***
「あら、ちゃんとさくらに言ったわよ」
「あいつ……」
大きく溜息をつきしゃがむ。
最悪だ、長男である俺がこんな失態を起こすなんて。信用がゼロになったも同然だ。
しかもよりによって相手がAだなんて。
たしかに最近会えてなかったから会いたいとは思ってたけどこんな再開の仕方は望んではなかった。
背中を壁につきもう一度、はーーと息を吐く。
……久しぶりに会ったけど可愛かったな。
火照った顔に普段は下ろしてた髪がまとめられてて何だか凄くいろっぽ……おいおいおい考えるな。
はぁ……あとでさくらに美味しいケーキのお店でも教えてもらおう。
こっちにおいでよ。 / 浮世英寿→←再会は湯けむりの中で / 五十嵐一輝
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いとこんにゃく(プロフ) - ?さん» リクエストありがとうございます!了解しました! (2023年3月21日 21時) (レス) id: 7d068b8785 (このIDを非表示/違反報告)
?(プロフ) - どうも、リクエスト失礼します!オーズのウヴァさんでツンデレ〜な感じで宜しければ書いて頂きたいです! (2023年3月20日 10時) (レス) id: 2395e0c03b (このIDを非表示/違反報告)
いとこんにゃく(プロフ) - 刻卯さん» はじめまして!了解しました!お時間頂くかもしれしれませんが気長にまって頂けると助かります! (2023年2月26日 18時) (レス) id: ebebe27350 (このIDを非表示/違反報告)
刻卯(プロフ) - はじめまして!リクエスト失礼します。ギーツで甘めのキューンくんを書けたらで構いませんのでお願いします。 (2023年2月26日 17時) (レス) id: e20218d379 (このIDを非表示/違反報告)
いとこんにゃく(プロフ) - 壱さん» 感想ありがとうございます!取り合い系大好きなので書いていてすごく楽しかったです。笑バレンタインネタ了解しました!お時間頂くかもしれませんが気長に待っていただけると幸いです🙏🤍 (2023年2月22日 23時) (レス) id: ebebe27350 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いとこんにゃく | 作成日時:2022年6月1日 0時