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僕を知らない君へ3 ページ41

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額や頬に付いていた汚れを親指で拭ってあげると
目を瞑って大人しくじっとしているA。

よく見てみると腕や足にも擦り傷がいくつかあって
血が滲んでいる。
袖を捲ると強く打たれたような痣も見えた。


たぶんさっき払った呪霊に追いかけられて
ここまで逃げてきたのだろう。








「怖かったね。」


『…。』







「大丈夫。僕が一緒にいるから、もう寄ってこないよ。」


『………………』







「……A?」


『……。』








一度降ろそうとすると
何も言わずに離れるのを嫌がるみたいに
力いっぱいぎゅーっとくっつくA。

よっぽど怖かったのか
しばらく動かなくなったAの
背中や頭を撫でてをあやしながら石畳の階段に腰掛ける。

たぶん、今のAの周りには
呪術師も、視える人間もいない。
小さな体では抱えきれない恐怖も不安も1人で耐えてきたのだろう。





気が済むまで待っていると
腕の力が抜けてゆっくりと顔を上げるA。
後ろに下がって立ち上がろうとするのを
手を掴んでもう一度膝の上に座らせ、
お返しに僕がギューッと抱き締めると
ケラケラ笑って楽しそうにはしゃぐ。

しばらく遊んでいると日が完全に隠れ
いよいよ夜になりそうな気配に
仕方なく立ち上がり、
帰路に付くため手を差し出すと
今度は躊躇いなく握り返された。









『…また、会いに来てもいい…?』


「…、」






小さな歩幅に合わせながらゆっくり歩いていると、
不意に問いかけられ足が止まる。

遠慮がちな言葉は小さく、
繋いだ手は不安そうに力が緩んでいく。
こんな顔させて、
何の言葉もかけてあげられない。






「…」


『……ごめん、なさい。』









「っ、…」


『おにいちゃん。いっしょに帰ってくれてありがとう。もう1人でだいじょうぶだよ。』








あんなに強く握っていた手はいとも簡単に解けて、
大人みたいに無理な笑顔を見せながら離れていくA。

肩を掴んで引き止め、
かける言葉も見つからないまま
振り向かないAを後ろから抱き寄せる


何を言っても、約束は守れないし、
僕じゃ君を守れない。

もう1度会ってあげることも、きっと出来ない。









「……さとる。」

『…?』






「僕の名前。ほら、言ってごらん。」

『…さ、とる。』







「そう。いっぱい呼んで。ちゃんと覚えて。」

『…、』







「また会いに来るから。そしたらもう、離れない。ずっと一緒にいよう。」

『…、うん』

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茉莉 - この作品が好きです。更新、待ってます! (2020年11月22日 22時) (レス) id: a68061a5cd (このIDを非表示/違反報告)
Gettion - え…心臓痛くなるくらい好きです。応援しています! (2020年11月6日 18時) (レス) id: b24edd395c (このIDを非表示/違反報告)
uka8502(プロフ) - 更新停止ですか??ホントに面白すぎてハマりました!一気に見ました!!更新ホントにお願いしますっ! (2020年10月19日 1時) (レス) id: 7913de20e0 (このIDを非表示/違反報告)
AiRIN(プロフ) - いつも楽しく拝見しています!正直、縞さんの作品ならどれも大歓迎ですが、しにたがり姫か好きなので、続編を待ってます! (2020年5月17日 13時) (レス) id: 931e2c7403 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2020年4月3日 2時

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