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僕を知らない君へ2 ページ40








「…?」





呪霊を祓ったとたん、突然ゆっくり開き始めた後ろの扉。
少し驚いて、ふり返る。
突然飛ばされた直後とはいえ、
人の気配には過敏な僕が今まで気が付かなかった。

どんな化け物が隠れていたのかと
中の気配に警戒しながら見つめていると、
想像していたより遥かに小さく、弱々しい影が恐る恐る顔を出した。


暗くなったせいで顔は良く見えないが、
異様なほど微塵も感じない呪力と沸き上がる違和感。
小さな体は静かに震え、怯えている。




何の根拠も、証拠もない。
ただ、何故か、分かってしまう。

まさか、こんなに小さな君に会えるなんて…







「A…」


『っ…』







「そんな所に隠れてどうしたの?ここにおいで。」


『…、』







警戒しながら、少しずつ、
僕の伸ばした手の元に歩いてくる小さな小さなA。

不審者を見るくらい顔は強張っててちょっと傷付くけど、
顔も手も足も小っちゃくて、可愛いくて。

そっと手に触れて両手でぎこちなく握られて、
暫く動かないでいると、今度は僕のお腹をくすぐったく触る。
何がしたいのか分からないけど、
とにかく愛らしくて眩暈がする。








『……おにいちゃん、は…にんげん?』


「ッン、……。うん」








『…Aに、嫌なことしない?』


「しないよ。絶対しない。Aは僕の宝物だからね。」







『あったことある?』


「うーん…。今はまだないかな。でも君の事なら何でも知ってるよ。」







『?』


「大丈夫。怖がらないで。ほら、もっと近く近く。」








不思議そうに見上げた瞳はまだ少し不安気味。
そっと頭をなでると一瞬だけ驚いて、
しゃがんで視線を覗き込むと恥ずかしそうに逸らされた。









「あー…、連れて帰りたい…」








思わず零れた本音を咳払いで誤魔化して、小さな体を抱きかかえる。
急に高くなった視線が怖いのか、
小さな手はしっかりと肩に回されて頬が緩む。







このまま、もっと一緒に。

たくさん話をして、
出来るなら傍にいてあげたい。

呪霊からも、呪術師からも、
何からも傷付かないよう、守ってあげたい。


今はまだ、体も、心も、穢されてない。





でもこれから、
もうあと数年で、
Aは孤独に落とされ、欲と呪いに蝕まれる。




それなのに僕は、
何度も傷付けられて、苦しみ続ける
この子の傍に居られない。





やっぱり僕は無力だね。

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茉莉 - この作品が好きです。更新、待ってます! (2020年11月22日 22時) (レス) id: a68061a5cd (このIDを非表示/違反報告)
Gettion - え…心臓痛くなるくらい好きです。応援しています! (2020年11月6日 18時) (レス) id: b24edd395c (このIDを非表示/違反報告)
uka8502(プロフ) - 更新停止ですか??ホントに面白すぎてハマりました!一気に見ました!!更新ホントにお願いしますっ! (2020年10月19日 1時) (レス) id: 7913de20e0 (このIDを非表示/違反報告)
AiRIN(プロフ) - いつも楽しく拝見しています!正直、縞さんの作品ならどれも大歓迎ですが、しにたがり姫か好きなので、続編を待ってます! (2020年5月17日 13時) (レス) id: 931e2c7403 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2020年4月3日 2時

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