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琥珀色の宝石4 ページ34

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『…っ、なんの、つもりですか。』


「!…もう目が覚めたのか。ったく、お前のせいで予定が狂ってばっかりだよ。」






あのまま意識を失い、
目が覚めると目的地だった数学準備室に移動していた。
椅子に座らされ、手足は縛られ、
体は怠くて堪らない。

しかし、皮肉にもこの類の不自由さには慣れている。
不安は感じながらも、不思議と頭は冷静で、
依姫の目を使い、周囲を観察すると
この部屋からも、山之内先生からも呪力を感じた。
こんなに分かり易いものに、
なぜ今まで気が付かなかったのだろう。








「わざわざ教師としてここに潜って1ヵ月。ずっとこの棟に結界の準備をしてた。バレないように、お前が学校にいない間にな。昼間はこれで非術師に化けてたんだよ。」


こっちに近づきながら種明かしをする先生。
放られた指輪からは呪力は感じないが、
見覚えのある気配がある。
私も生まれた頃から身に付けていたアレに似ている。






「呪力を封じ込める呪具だ。手に入れるのに苦労した。」



髪の毛を強引に持ち上げ、
無理やり顔を上げさせて目線を合わせる。
私を、というより、
私の瞳を恍惚として見ている。
息は荒く、興奮したように喉を鳴らせて。





「素晴らしい。琥珀色で美しく、禍々しい。まさに宝石だ。」

『…。』





「怖くないのかい?恐怖で揺れた瞳も見てみたい。」

『…。』






「…、ああ。そうか。僕なんて、その気になれば調伏できると思ってるんだね。見えているんだろう?僕の呪力の強さが。君より劣っていることが。」





先生の言っていることは正しい。
呪力封じの呪具を外した先生の呪力は、私よりも低い。
どんな術式を使うのかは分からないが、もし身の危険が迫れば
きっと私の意思はなくとも一瞬で終わる。

こんな最悪の状況でも、
落としてきたお弁当を気に掛けるくらいの余裕があった。
生意気にも、
悟がいなくても切り抜けられると思っていた。








「…温いなぁ。五条に甘やかされて、少し調子に乗ってるんじゃないか?」

『っ…、ん"、ン』






【「―ひとりじゃ、何も出来ないんだよ。君は。僕の指に歯を立てることさえね。―」】

『…っ!、…っ!』






舌を押さえるように親指を口に詰められ、顎を掴まれる。
抵抗しようとした体には力が入らず、呻き声だけが零れた。
先生の言葉が聞こえた瞬間、
冷静だった思考も、余裕も、微塵もなくなった。
目の前の自分より劣るはずの男に、何も出来なくなった。

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茉莉 - この作品が好きです。更新、待ってます! (2020年11月22日 22時) (レス) id: a68061a5cd (このIDを非表示/違反報告)
Gettion - え…心臓痛くなるくらい好きです。応援しています! (2020年11月6日 18時) (レス) id: b24edd395c (このIDを非表示/違反報告)
uka8502(プロフ) - 更新停止ですか??ホントに面白すぎてハマりました!一気に見ました!!更新ホントにお願いしますっ! (2020年10月19日 1時) (レス) id: 7913de20e0 (このIDを非表示/違反報告)
AiRIN(プロフ) - いつも楽しく拝見しています!正直、縞さんの作品ならどれも大歓迎ですが、しにたがり姫か好きなので、続編を待ってます! (2020年5月17日 13時) (レス) id: 931e2c7403 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2020年4月3日 2時

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