しにたがり姫 (ページ34)

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しばらく動かずじっとして
髪を撫でたり、額や頬、唇を触ったりする悟をされるがまま受け入れる

悟「それで、なんでキスされたの？誘った？」

『…さそってない。』

突然手を止めさっきまでとは少し違う雰囲気に身構える

いつものような柔らかさが消え
責めるような口調が少しだけ胸に刺さる

悟「どうだった？」

『……言いたく、ない。』

悟「どんなふうにされたの？」

『…。』

悟の目から逃げるように俯き、目を合わせないようにするが
腰に回された腕に力が入り体が触れ、さらに距離が近くなる

悟「ほら、はやく。」

逃げ場のない状況に耐えきれず
なるべく短く簡単に説明をする

『…急に目の前に来たから、後ろに離れようとしたら……頭を押さえられて、…した。』

悟「…それで？」

『…それだけ。』

恐る恐る顔を上げて様子を伺うが納得などしているはずもなく
逃げられないよ。とでも言わんばかりの鋭い視線に捕まる

だがあまり良い思い出でもない、
ましては更に機嫌を損ねそうなことをこれ以上詳しく説明はしたくない

このまま黙って終わらせようと心に決め口をつぐんだら
小さなため息が零れる音がした

悟「…僕ならこうする。」

『…！』

悟「甘いね。黙ってれば済むと思った？」

そのままソファに押し倒され大きな体が覆いかぶさるように上に重なる
なんでこんなことをするのか、
どうすれば許してもらえるのか分からない
驚き、怖くなり、思わず肩に力が入り身が小さくなる

『…さとる、…ごめんなさい。』

悟「なんで謝るの？」

キスをされたから？
はぐらかそうとしたから？
呪霊と口付けなんかした私に嫌悪しているのだろうか

初めて悟のことを怖いと思ってしまう
あんなに優しくて暖かい大きな手が近づくのが怖い
冷たい視線が怖くて目が見れない

一つも同じところなんてないのに

あそこから私を救い出してくれた優しい人なのに

地下にいたあの人たちと重ねてしまう

でもそれよりも、

辟易され悟が離れていくことを想像するのが怖くて堪らない

『……嫌いに、ならないで…。ごめん…なさい…っ』