しにたがり姫 (ページ27)

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「…ぉぃ」

『…。』

宿「A。早く起きろ。」

『っ！！？』

名前を呼ばれる声が聞こえ目が覚める
頭痛と気怠さで一瞬視界が霞んだがすぐに我に返り
自分の胸に手を当てるが一滴の血も付かず傷すらない

辺りを見回すと
何か大きな生き物の腹の中のような不思議な場所にいる
宿儺はすぐ隣で着物のような服を着て頬杖をついてこちらを見ていた

『…生得、領域？』

宿「ほう。物分かりが良いやつは嫌いじゃない。」

相変わらず踏ん反り返って横柄な佇まいの宿儺を一瞥し
もう一度辺りを見渡すが他に人も気配もない

ここがどこであるか予測するのは容易だが
なぜ自分がここにいるのかが分からない

確かに心臓を一突きされた感触はあった

なぜ殺されたはずの体が無事なのか

宿「ここに来れるのは特殊な術式がなければお前と小僧だけだ。お前の体は確かにあの場で殺したが、まだ死んではおらん。」

『？』

宿「俺の望みを叶えれば生き返らせてやろう。」

何を企んでいるのか不吉な笑みに背筋が凍る

生き返らせたとして本当に元に戻るのだろうか
例え呪霊か怨霊として現世に戻されたとしても
このままここで飼い殺されるよりはましか

宿「疑っているな？本体が術式で細切れになってさえいなければ何とでもなる。安心しろ。どうせあの男がお前の体を好きにさせるとは思えん。」

あの男 ―悟のことか
最後は他愛ない出張へ向かう前の簡単な会話で終わってしまった

今頃何を思っているのだろう

任務をこなせず仲間も守れず死んだことに失望されただろうか
肩の荷が下りて息を付いているところだろうか

そういう人ではないし
自分のことを大切に思ってくれていることは知っているのに

突然最後になったことに少し後悔が滲んでしまう
五条先生なんて呼ばずに、彼が望むままに悟の名前を呼べばよかった

『望みって？』

宿「まあ既にほとんど叶っているがな。」

『？』

宿「わざわざ殺してここに連れてきたのはお前の記憶を辿るためだ。ここなら俺の意のままに大概のことは好きにできる。」

『なんでそんなことを？』

宿「気になるだろうが。俺の血を引いたお前が何をして何をされたのか。」

『え？』

そんなことでわざわざ殺されたのか