しにたがり姫 (ページ14)

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夜「また遅刻だぞ悟。毎回言わせるな。」

悟「どうせ言っても直んないんだから、諦めてくださいよ。」

夜「久しぶりだA。綺麗になったな。」

『ご無沙汰してます。』

悟「僕の許可なくAを見ないでください。」

夜「馬鹿が。相変わらずか。」

以前に何度か会ったことのある都立高専の夜蛾正道学長

たくさん貰った手作りのぬいぐるみは今でも部屋にある

中学を卒業し都立呪術高専への進学を果たすには学長の面談を受ける必要があった

悟は相変わらず進学と入寮に不服そうだが

この三年間、自分の呪力が日々増え続けているのは感じていた

このまま一般人として生きることは既に不可能

望みを叶えるには呪術師になるしかなかった

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夜「では聞こう。A、何をしに来た。」

ぬいぐるみを作る手を止めAの前で仁王立ちになる夜蛾学長

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『死に場所を、探しに。』

夜「…死に場所？」

悟「…。」

夜「呪術師など、ろくな死に様はないぞ。」

『死に様なんてどうでもいい。呪い殺されようと、嬲り殺されようと、辱め殺されようと構わない。』

ふざけているようにも何かに狂っているようにも見えず

ただ真っ直ぐと目を見て言葉を発している

何度見ても義務教育を終えたばかりの15歳とは到底思えない

顔立ち、雰囲気、佇まい

すでに己の呪力を操る能力は身に付けているというのも事実だろう

悟の言うようにわざわざ呪術師になる必要はない

上層部の手の届く所に置くメリットもない

夜「ふん。確かに呪術師は常に死と隣り合わせだが、呪殺志願者をわざわざ入学させるわけにはいかん。」

『…。』

Aに背を向け座敷に戻り、

ぬいぐるみ作りを再開するためにポケットの針に手を伸ばす

夜「！？」

確かに入れたはずの針の感触はなく咄嗟にAの方を振り返る

『借りるね。』

予感は的中し約15㎝の鋭い針はいつの間にかAの手の中にあり

まさに首元に突き立てられようとしている

夜「おい！」