Story of RAiNBOW【九条天】 (ページ10)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:11,745 hit

trip★*07 ページ10

.

普段通りの22歳の集い。
一時は一触即発の空気にもなるも、そこで喧嘩別れしないところが彼等の良い点か。
互いが本音で語れる仲だからこそ、ひかりが自身のグループに危害を及ぼしている当人の姉だったとしてもこうして交流を持っていられるのだろう。

「へえ。なるほど、そんな悪さをしてるの。あの子たち」

「なんかこれ、告げ口してるみたいで大人気なくねぇか。八乙女」

「なんか俺も罪悪感湧いてきたわ。自分で解決できないから年上の姉に頼ってるみたいな」

「「あと笑顔が怖い」」

「失礼しちゃうわ。別に怒ってなんかいないわよ。だけど、すべてがあの子たちのせいとも思えないのよね。背後に薄汚いネズミの匂いがぷんぷん匂うのよ。やっぱりあの時始末しておくべきだったかしら」

口々にでる恐ろしいひかりの言葉はまるで呪言か。
アイドリッシュセブンの逢坂壮五の発言にもたまに垣間見える狂気というものがあるわけだが、金持ちという人種はどいつもどこかネジが吹っ飛んでいるのだろうかと疑問を抱く。

「今度会った時には彼奴の"おままごとセット"をカチ割ってやるわ。このひかり様の類まれなる腕力でね。所詮、塩化ビニルモノマー。手段を選ばなければいくらだってぶっ壊してやれるわ。ふふふ、楽しみね」

「怖いのですが」

「恐ろしい奴だな、本当に」

「なにか言ったかしら」

「「いえ、全く」」

そんな春の夜、アイドリッシュセブンの新曲。
"Sakura message"を聴きながら帰路につくひかりは桜の木が見守る中、再び彼と再会することとなるのだった。

◇

　メンバーと別れ、私情を持ち込んだ自分に戸惑う九条天は少し足を延ばし行きつけのカフェで気分転換をし、ひとり、近隣の公園へと繰り出していた。

春の夜といえばやはり夜桜が美しく、この時間帯ともなれば行き交う人々もひとりというよりは二人組が目立つ。そんな出会いと別れの季節を肌に感じればふと瞳を閉じ、春風を感じていた。

風と共に運ばれてくる音は確かな旋律を帯び、つい耳を澄ませてしまえばその戦慄にはどこか覚えがある。

――嗚呼、アイドリッシュセブンの"Sakura message"か。

「にしたって、楽にあそこまで言われちゃ少しはTRIGGERについて調べておかないとだめよね。確かに、友人のグループについて関心を持たないのはまず人としてどうかって話しよ、うん。私も反省すべきよ、ひかり」

その呟きには、その声には確かな覚えがあった。