trip★*02 ページ5
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何人もの使用人に囲まれ、身支度の1から10までを終えるとたった１つの呼吸で御堂家の一人娘、"御堂ひかり"になってしまうのだからまるで魔法にかかったような感覚に襲われる。
さすがにこの家で20年は過ごした今、そんな環境も漸く自然に受け入れることができるようになったわけだが、転生当初は思わず流行っていた恋愛ドラマを連想させていた。
それはド庶民の女子高生と財閥の跡取りが織りなす物語。
大変なブレイクをしたあの作品は確か、原作コミックを超え、ドラマにまで反響があったか。
まあつまりはなにが言いたいかといえば、ここ御堂家はその財閥一家に引けを取らない具合だということだ。
「姉貴、今日は本社だろ。なら途中まで乗せてけよ」
「構わないけど。今日は月雲で仕事だっけ？」
「嗚呼。まあそんなところだ」
「なら、途中なんかじゃなくてちゃんと送ってあげるわ」
「いいって。姉貴と了さんが会ったら面倒すぎる」
「おほほ〜、何を言うのかしら。私はなにも間違ったことは言ってないわよ。さ、行くなら乗って？」
そんな虎於の溜息とは裏腹に愛車のエンジンは絶好調か。
本来ならばお気に入りのRe:valeの新曲を流すところを、そこは姉の気遣いというやつなのだろう。
プレイリストから流れるのは耳慣れたZOOLのアルバム。
「姉貴はどれが好きなんだよ」
「んー、やっぱり"ZONE OF OVERLAP"かしら」
「へぇ、あれのどこが好きなんだ？やっぱり俺の…」
「そんなの決まってるじゃない！あそこよ！！ハルの"JUST MAYBE"からの旋律…ほらここ！はぁぁぁ…わかる？ここでグッと心を掴まれるわけよ…やば、会いたくなってきた」
「……それなら、同じ旋律を俺も歌ってるだろうが。なにが違うんだよ」
「あ、着いたわね。ほら、おりて。いってらっしゃ〜い」
にこりと涼しい笑みを浮かべ、車内から半ば追い出すように自分を外へと追いやられるのはおそらく姉くらいだと苦笑い。
「ったく、押すなっての。そういえば、今日、"アイツら"と飲んでくるんだろ？遅くなりすぎるなよ」
「…えっ、ウケる。貴方が思っているような間違いなんて起こりようもないメンツだってば」
「なっ、おい。ちょっと待っ…くそっ、あのクソ姉貴…」
これが姉弟の日常。
朝から巻き起こる喧騒…というよりは虎於が一方的にひかりに振り回されているだけであるわけだが。
まあそれはともかく。なにを言いたいかといえば。
今日も御堂家は平和です。
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