trip★*00 ページ3
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"deep RIVER"
それは、都内某所の一角にあるクラブ。
無論、彼等は知っているだろうが。
そんな聖地で今、私がなにをしているかといえばそれはまさしく、
酔いつぶれていた。
「ひかりちゃん、それくらいに」
「マスター…、いいの。私、今日は飲んで飲んで飲んで…そうでなくっちゃやってらんないってぇの。馬鹿ぁぁぁ」
「おやおや、これはまた重症だね」
ガコン、なんて鈍い音を立て手にしていたグラスをカウンターへと打ち付ける女性。
彼女こそが今回の物語のヒロイン、"御堂ひかり"その人である。
先程から溢れ出る涙は留まることを知らず、過去何人目かの彼の浮気発覚を前に泣き崩れ酔いつぶれている彼女がここを訪れるのはいつもの話し。
マスターからすれば見慣れた光景。
それ故に彼女の対処の仕方もまた把握しているのは勿論のこと、酔って自力で帰れないだろう彼女を傍目に受話器を手にする。
電話先は言うまでもない、彼女のたったひとりの弟。
"御堂虎於"のプライベートナンバーであるわけだが。その手を制する客人が意外にもひとり。
それは春を予兆させる薄紅色。
それいでいて洗練された仕草、まさに完璧を成すとは彼のような人を言うのだろうとそう思わせる男性か。
「マスター。僕が解決するよ。美味しいご飯の御礼に」
そう、うすら笑みを浮かべる彼は何席か離れたその距離を埋めるかのように一歩一歩、近づく。
その表情に先程までの春風のような笑みなど微塵もなくそれはむしろ雪の女王かの如く、冷ややかな視線。
「ねえ、君。良い大人が社会に迷惑をかけてどうするの。これ以上、騒ぎ立てるのなら帰って。タクシーぐらいは呼んであげる」
腕を組み、眉間に寄ってしまった皺はそのご尊顔にはあまりに不釣り合いか。
ここまで冷ややかな視線を投げられてしまえばさすがの酔っ払いも引き下がるそんな絶対零度の眼差しと視線を通わす。
だが、そんなことでへこたれる彼女ではなかった。
それは、天才と呼ばれたあの九条天でさえ予期できなかった出会い。
「なら、貴方が私の寂しさを埋めてよ」
ぽろぽろと零れる涙を目にしてしまえば、先程までの怒りなど何処かへと消えてしまった。
「僕は未成年。だからアルコールは付き合えないよ」
「……なら、結婚して？」
不意に奪われた唇は、"初恋の味"がした。
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