Story of RAiNBOW【九条天】 (ページ16)

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trip★*13 ページ16

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ŹOOĻ(あの子達)の自由な音が失われていくのを感じた。
自由を歌い、革命を歌い。
どんなに煽っていても、どこか漂う虚無感。

楽譜はこんなにも自由なのに、誰よりも不自由なのは
歌っている彼等だと感じた。

「全く。手がかかって仕方ない」

「誰の手がかかるんです？」

さらりと前髪を掻き分け、見下ろす彼はŹOOĻのメンバーのひとりにしてこの度の相手役、棗巳波である。

今までも俳優(というのも烏滸がましいが)として稀にこうして声がかかることがあったわけだが。
家業、モデル業と続き多忙を極めているため、断ることがほとんど。

今回、出演を決めたのは他でもない。
内容は勿論のこと、共演者に役者が揃っていたためだ。

「御機嫌よう。私の愛おしい彼氏サン？」

「ふふ、照れてしまいますね」

見上げ相手を見据えれば、そっと頬にふれ微笑む相手はどこか色めかしい。
さすが棗巳波と内心にやにやが止まらないひかりであったが、それさえも見透かしたかのように、ぽてと額に手をあてられる。

「ひんやりしてて心地良いわ」

「ひかりさん？ここはときめいてもらわないと。冷えピタではないんですよ、私」

「ミナくんから聞くと冷えピタも高級感がでてくる気がするわね」

「からかわないでください」

控室でのひととき。
ドラマ『Mission』といえば彼の有名なRe:valeのメンバー"千"が出演する大人気作品。
そんな作品の中で彼女に与えられた役割は、棗巳波の婚約者役にして二階堂大和に殺害される女性役というなんとも表現し難い役回りというべきか。

「そんなまさか。ミナくんを彼氏にできるなんて役得だと思ってるわよ」

「ふふ、私は別にこの状況を現実にしてしまっても良いと考えてますよ」

「あー、オーケー。私が悪かったわ？だから、その怖すぎる笑顔をしまっていただいても？」

「理解していただけて嬉しいです」

決まりが悪そうに傍目に見据えると、不意に通う視線に互いにぷっと笑みがこぼれる。
決まりが悪い時にみせる表情は姉弟ともに似ているんだなという言葉をそっと胸に秘める巳波であるわけだが。

楽や大和とはまた異なる居心地の良い関係性を築く両者はある種、良い相性をもつのやもしれない。
遅れ控え室へ入ってきた大和が居心地の悪さを感じるくらいには、ね。