お掃除と本 2 ページ5
着々と本を並び変える。
そしてまた違うシリーズの漫画を並べ替えようとした時、隣の雑誌に手がぶつかった。
「あっ」
その小さな衝撃で、立てかけるように置いてあった雑誌が雪崩のように崩れてしまった。
ブックエンドか何かがあればいいけど、ないよね……。
「さてと……ん？ ……あ」
体が硬直した。
もしかして、これってまさか……
最初にえがついて、次にろがつく。そして本で終わる。
……アレを見つけてしまいました。
「ひぇぁぁああ！！！！？？？」
いきなりの女性の卑猥な姿に頭が混乱し、その本を床に投げつけてしまった。
一気に顔が熱くなるのが分かる。
なにしろ僕はこういう本を読んだ事も買った事もないし、実物を手に取って見るのも今が初めてだ。
手に取らずとも視界に入る事は稀にあったが、それも本目的ではなく他の商品を取りに行く時につい目に入ってしまう位だ。
……動揺し続けてても収拾がつかない。僕は深呼吸して心を落ち着けた。
「そっか……環くんは今まさに思春期だよね。それを理解していないまま掃除なんて事勝手にしてしまって……どうしよう……」
そもそも後になって考えてみると、親でも兄弟でも何でもない人に勝手に自室を掃除されるのは、
僕でもあまり心を許したくはない。
「なにしてんの」
「うわあぁぁ？？！？？！」
いきなりのその声に、僕は思いきり後ろに振り向いた。咄嗟に僕はその本を背中に隠した。冷や汗が一気に溢れ出る。
「たっ環くんか！ こっこここんな所でどうしたの！？」
「ここ、俺の部屋だけど」
「あ、 そ、そうだったね！！ ごめんね！！」
声の調子がいつもと全く違くなってしまい、環くんに不思議そうな顔をされた。
そもそも僕が部屋にいるだけでおかしな状況だなと環くんは思うだろう。
「てかそーちゃん、今なんか隠しただろ。なに隠した」
ば、バレてた……
バレてしまった事によって冷や汗が更に出てくる。
観察力が優れている環くんだが、今その力を発揮しなくてもよかったな……と思ってしまう僕であった。
隠した物としては最高レベルに言い出しにくいものである。正直に言うべきなのか、誤魔化すべきなのか……頭が爆発しそうだ……
「いや！ 別に、 違うよ！大丈夫だから！ ごめんね！」
早く返答しなければと自分を急かして出た言葉は、非常に見当違いな言葉だった。
「いや何がだいじょーぶなのか分かんねーし。そーちゃんまた隠し事かよ。仲良くできっかなって思えてきたのに」
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作者名：梅傘 | 作成日時：2018年8月18日 0時
