84：品位とは ページ46
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"君なら大丈夫"
彼が最後に残した言葉は、最後に折れかけたアレックスの心に灯をともした。
おそらく、自分は目の前のこの存在から逃れることができないであろう。
それはいくら自身が万全な状態であったとしてもだ。
だが、ここで引くわけにもいかない。
『あれ？逃げなかったの？別に貴方に興味とかないからどっか消えてくれていいんだけど』
「アレキサンダーを返せ…でなくては、ここを離れるわけにはいかないのだ」
『まさか
自身の相棒をああも無残にやられてここで引き下がるなどあってはならない。
それに、ここで自分が下がっては次に標的となるのは間違いなく他のマスター…ましてやあの兄弟の元へは行かせるわけにはいかないのだ。
ならば、ここでなにかしら一矢報いてみせるくらいの気合いは見せなければな。と、凛とした面持ちで彼は目前の敵を目視するのだった。
「我が名はアレックス・ホール。貴様が、罪なき者たちを葬った当事者とみた…私が今ここにその悲しみの連鎖に終止符を打とうではないかっ！！」
『あっつ苦しい男ね。そういうむさいのとか…冷めるのよ』
「…？！」
気付けば背後に立たれ、向きなおれば彼方へと突き飛ばされる。
その力量といえば、人間離れした…まるで、そう。これではまるで"英霊"と戦っているような力量差ではないか、となんとか立ち上がる。
『うわ…脳筋野郎って本当に頑丈なのね…それに、貴方。光を失わないのね。その目…こちらに勝てないと理解しているはずなのに今もなお戦意を失わないその目よ。人間てのは本当に…憐れな存在ね』
「……目的はなんなのだ…貴様、人間ではなかろう…。であれば、なんだというのだ」
『貴方に答る必要性ってないと思うんだけど。ま、いいかー。これから死ぬ存在に…その意味のない決意に１つの望みだけでも残してあげようかしら。私の品位のためにもね』
「品位…？品位など、とうの昔に失っているではないか。あのような惨く…残忍な殺し方…あのどこに品位があるというのだ…笑わせるっ」
『…………あっそ。じゃあ、死ねば？』
「(すまない、アレキサンダー…)……ただではやられぬわっ！」
『あああああ、ほんっとにうざったい！！』
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