72：地獄のペア ページ32
真っ赤なルビーのような瞳と視線を通わせれば、なんでか悟った。此奴は紛れもなくあの"英雄王"そのものだと。毎晩、母親に語り聞かされてきただけあってか…見れば見るほど、確信めいたなにかがある。
「なにか、僕に用かな」
「別にないけどさ。あんまり煽るようなことするのやめとけよ。なんかいらっときた」
「今度から気を付けるよ。だけど、おにーさんも、口のきき方には気を付けた方がいいと思うよ」
にこっと微笑んで見せればその場をあとにする男の子を溜息と共に見送る樹。
無論、エレシュキガルはカタカタと震えていたわけだが。
「い、樹。よく"ギルガメッシュ"にあそこまではっきりと言えたわね…」
「やっぱりギルガメッシュだったんだな」
「でも、若かったよね、彼。サインとかもらっておいた方がよかったんじゃない？母さんに怒られそうだ、また」
「うわ。そういえばそうだった…」
このサイン１つで大分、怒りを鎮火できたことに気付けば絶好のチャンスを失った橘兄弟であったわけだが、やはりどこか彼奴を認めたくない自分がいることに気付く樹。
その理由はやはり、エルキドゥを死へと導いたのが紛れもなく彼だから…と考えていることに起因するわけだが。今はさておきだ。
話しの流れを遮ったことを謝罪すれば再び話しだすシェーンの言葉に続いてハイネスが声をあげるのだった。
「では二人組を発表する。まず１組目は、アレックスとウィリアム。そして２組目がミラと私。それから最後は…」
「ちょっと待って。ストップ。まさか、私にこの脳筋野郎と組めなんていうんじゃないわよね」
「…？護衛の観点から考えても女性が狙われている今、私がミラと組むのは必然かと思ったのだが…それに、アレックスかウィリアムと比較すれば君はそちらを選ぶのでは…？」
「げっ…忘れてた…いやでも…いやうん。こっちには樹ちゃんがいるんだったわね…オーケーよ。かなり不満だけど、請け負うわ…」
「でわ、決まりだ。集まってくれてありがとう」
と、話し合いが終わればシェーンと話したい樹であったが、先にミラに声をかけられるのだからそれは叶わずに終わるのだった。
「樹に碧！エレちゃんも！また、会えると思ってもなかったよ！！碧もマスターだなんて思ってもなかった！」
「僕も。ミラもね。マスターだとは思ってなかったよ。よろしくね」
「うん、よろしく！」
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