69：決着 ページ29
決する瞬間は一瞬だった。本当に一瞬。それは相手の動きの読み合い。
アレックスの強烈な一撃が放たれ、ルートを変えさせられつつも確実に距離をつめる碧。
無論、近距離となれば更にアレックスが有利に働くわけだが読み合いにおいて彼が負けることはなかった。
あとは行動に起こせるかに全てがかかる一か八かの相手の間合いに飛び込むという…ある種の碧のお得意技を仕掛けるわけだが。
読み合いに打ち勝った碧はアレックスからのストレートを交わし彼のがら空きになった肩に手をつき身を翻す。
あとは技と働いた方向と同方向に力を働かすことができれば倍の威力を与えられるわけだが、まさに延髄蹴りを決めた直後、アレックスの最後の一撃を避けられず突き飛ばされる碧。
延髄にあれだけの打撃を与えられてまだ動けた彼の動きは予想外だっただけに碧もまたまともにダメージを受けるわけだが軍配は彼に上がることとなる。
「ん、これで決着はついたね」
「待って、アレックスさん大丈夫なのか？！動かないんだけど、まさか、大丈夫…だよな？」
「うん、大丈夫だよ。息はちゃんとしてるから。でもちょっと、この後の集まりにいくのは難しいかもしれない。そっちは大丈夫？」
「けほっ…ん。たぶんあばら何本かいったけど、大丈夫だよ、問題ない」
「いや問題あるよな？！兄貴の阿呆、馬鹿！！俺、治癒魔法なんて使えないからな！！」
ゴツーンと良い音をたてて碧の頭にヒットする樹の鉄拳。
その一部始終に目を見張るエレシュキガルであるわけだが、二発目のお見舞いが炸裂する前にどうにか割って入ることに成功するのだった。
「い、樹っ。気持ちはわかるのだけれど、頭から出血してるのだからさすがに頭は駄目なのだわ？！」
「…言われてみればそうか。だが、断る。覚悟しろ、兄貴」
「碧、逃げるのだわっ。さすがに私にも止められないのだからっ」
なんてわちゃわちゃやっている二人を前に、ゆっくりと目を開けるアレックス。
"気づいた？"なんてにこりと微笑む自身のサーヴァントと視線を通わせればにこりと頷く。
「楽しかった？マスター…って、聞くまでもないか」
「これ以上になく楽しかったぞ。負けたのは悔しいが…それにしても、兄弟仲が良いのはいいことだな」
「そうだね。本当に。(あの３人が無事最後まで辿り着けるといいな、なんて考えてしまうほどにね)」
そう、"今日のところは休んでよ？"と笑う男の子ににこりと頷くアレックスなのだった。
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