44：強さの理由 ページ3
ディーラーがカードを切り、ゲームの火蓋は切って落とされる。
あれだけの騒ぎを起こしたのだ。
クレイジーなジャパニーズがハイネスにポーカーを挑んでいる。しかも全額BETなんていうこの状況はあっという間に会場上の噂となり、多くのお客が彼らの戦いに釘付けとなっていた。
終いには、どちらか勝つかかけ始める始末であるわけだが、無論、大穴は碧。
碧のかけた掛け金の３倍をかけたハイネスの行動から更に事態は白熱し、今ここにゲームがスタートしたわけであるが。
「通常は、レイズして掛け金を増やしていくわけだけど…どうせ、貴方、一発で全額までBETする気でしょうし…まあ、多少興ざめにはなるでしょうけど、ルールを変則的にして３回タームで打ち止めにしましょうか」
「そうだね。君とは無駄な駆け引きは必要ないだろうし、それでお願いしようかな」
「……私と対等だと思っているのも、今のうちよ。慈悲はないわ…嗚呼でも、樹ちゃんは気に入ったから、貴方になにがあっても彼だけは私が養ってあげようかしら」
「面白い冗談だね。始めようか」
変則ルールに有無を言わせる間もないこの威圧感。
聖杯戦争とは本来、サーヴァント同士の戦闘であるはずなのだがこれはこれで面白いか…とほくそ笑むフィン。
冷静さを失ったハイネスがどこまで実力を発揮できるか。
この男を相手に、その精神状態…もしかしたらもしかするかもなと樹の隣で主人を見守るのだった。
ディルムッド。君は、面白いものを見逃したかもしれないな。
カードの配布が終わり、手持ちを互いに確認する。
まずは１巡目はお互いの様子見…という展開が一般的であろうが、順当にハイネスは数枚を交換。だが、碧はというとカードを伏せパスを宣言するのだった。
「碧。カードを交換しなくていいのかしら」
「うん。これで勝てるから、大丈夫」
「……ふぅん。随分と余裕ね(こいつ一体なにを考えているのかしら)」
ハイネスがポーカーが強い理由。
それは単に、彼女の運の強さのみではない、そう、彼女は人間観察能力に長けているのだ。
呼び方を変えるのならば読心術というべきか。
相手の心理状況から手札を推測し、それを踏まえて自身の手札を切る。
思い切りと度胸もある彼女にこのゲームは最適ともいえるわけだが。
どうも、こいつの心境は読みにくい。
ブラフと考えるのがここは無難だろうが、なんだろう。
この男からはやるといったらやるという凄味を感じるのだ。
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