57：知りたくない現実 ページ17
人間の殺し合いが普通に存在する世界ってなんだよ。
それが許される世界ってなんだよ。
それはつまり、ここにいる誰しもに平等に死が訪れるということじゃないか。
瞳いっぱいに涙を貯めるも、泣くのは今すべきことではない。
今自分のすべきこと、それは。先に逝ってしまった皆の死を無駄にしないことだ。
「うん、良い目だね。…でも、そう悲観することもないんだ。無駄な殺し合いが起こらないようにアサシンのマスターが皆に投げかけてるんだよ。サーヴァントを失った今、彼は早々に退去すべきなんだろうけどこれは彼の意思でね」
その話しを聞いたとき、樹はシェーンらしいなと思った。
あの人のことだ。きっとこの事件を解決するまで意地でも調査を辞める気はないのだろう。
「だから今はマスター同士の争いは一時休戦。それで犯人を捕まえようって寸法かな。まあ、だいたい誰が犯人はわかっているわけだけど…うーん。どう見てもそうは見えないのが困りものなんだよね」
「犯人捜しをすることは気がすすまぬが純粋な戦闘に水を差すのならば仕方ないのだろう」
「犯人わかってるのか…一体誰が」
不審死事件なんて言われている以上、きっと言葉にするのも悍ましいような殺され方をしているのだろう。サーヴァントたちは実体が残らない今、きっと残った遺体はジェシカのもののみ。
一体どんな気持ちだったのだろう。彼女はきっとこれから前向きに生きて…きっと家族と再会して、と考えれば考えるほど怒りが込み上げる。
そんな強く握る手にそっと手を添えてくれるエレシュキガルに苦笑いを浮かべる樹。
その様子を見据え気持ちの整理がつくのを待ってくれれば"仲間外れは誰だと思う？"とにこりと微笑むアレキサンダーの言動に背筋が寒くなった。
セイバーは、ハイネスさんとフィンさんのところだろ。
サーヴァントは実際にみたのは一瞬だったけど。
アーチャーはサティラさんのところ。
たぶんサーヴァントはあのカジノの前で啖呵をきった男の子。
んで、ランサーは俺たちで。
ライダーはここにいる二人。
アサシンはシェーンさんとマルガレータ。
バーサーカーはジェシカさんとバニヤンで。
キャスターはまだ会ってないって聞いた。
……あれ、ミラさんは？
ミラさんもマスターだってさっき言ってたよな。
嘘、だろ？
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