53：セイバー陣営 ページ12
婚約者の鞄を拾いその場をあとにするサティラを見送る３名であるわけだが、"つまらないのー"とグラスの中の氷をカランカランと弄ぶハイネスに預かっていたストールをかけてあげるディルムッド。
そんな彼のやさしさに、自然と口元が緩むハイネスであるわけだが、さしてサティラへの関心は薄れたのか、ぐいっと残りを飲み干せば溜息をつくのだ。
「なにがあったのか聞いても」
「マスターが揃ったのよ。それでそのマスターがいけ好かない奴で…嗚呼でも、ディルは彼奴の戦いを楽しむのかもね。たぶん、あれは剣士よ。騎士とは程遠いけどね。どうする、今から
「まあ、あまり深いことは追及しないことだな。それにしても、なかなか骨がありそうだったが勝てるのか？ハイネス」
「ふふ…フィンたら誰に聞いているのかしら。このハイネス・エルメロイ・アーチボルトがあんな男に敗北するとでも？笑わせるわ」
その名を聞いた瞬間だ。ディルムッドの動きが止まる。
そう、彼は彼女の本名…いやフルネームを知らなかったのだ。
なんとなく心のどこかで"彼"との共通点は感じていた…だが、あまり良い記憶とは言えないから。心の奥にそっととどめていたのだ。
が、発覚した今、この事実を受け止めなければならないだろう。そして、ディルムッドの中に覚えた感情は不思議と憎悪ではなく、"今度こそは"という思いであったことに彼自身も驚くのだった。
そんな彼の一部始終を目にし、ふっと笑うフィンがいたことを彼は知る由もないだろうが。
「ディル？」
「マスター。私はここに改めて、貴方をこの戦いの勝利へと導くと約束します。貴方がアーチボルトの出身であるというのなら尚の事、この戦いに負けるわけにはいかない」
「…貴方、まさか。いいえ、ここは聞くべきことではないわね。けれど、無事この聖杯戦争を終えたそのときには話しを聞かせてね」
「はい。その折には必ず」
「さ、話しはまとまったようだな。ではこれからどうするか話していくとしよう」
「そうですね。とはいえ、アサシンのマスターからの"投げかけ"がある今、下手に動くのも得策ではないかと」
「ああ、あのFBIの…そう、シェーンさんが言っていた例の"変死事件"についてね」
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