【短編集】お気楽主が今日も手強い【派生作品】 (ページ3)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:5,803 hit

00：Start!! ページ3

.

日本政府ブラック本丸対策課とは、政府公認の機関として名高い。

というのも、この世には"審神者"という職業があり、日々歴史壊変を目論む者どもから歴史を守っているのだが、近頃、どうも審神者という存在もままならないらしい。

共に戦う刀剣男士に無理な労働を強い、暴力に夜迦。

そのような行為に及ぶ審神者が増えてきている今、本丸職員は日々、各本丸にまわっては査定を行っている。

また、彼らが名高い根拠は他にある。

それは、ここ対策課に属す職員は皆、等しく"神貰(かみもらい)"という特殊能力を持っている。

生まれ持つ者から突如能力の開花がある者。
様々であるが、この物語の主人公である深山(みやま)静稀(しずき)という男は後者であった――。

ところで、その深山という男なのだが。

「どこのお店の方ですか？」
「是非、貴方のお店に来店したいわ。お相手になってくださいますよね」

実に、巻き込まれ体質気味というべきか。
こうして、夜な夜な街を歩いていていると女性に声をかけられることは珍しくない。

「ええっと、その僕、そういった職業の者じゃないというか…あははは」

というのも、彼の服装に問題があるのだ。
上から下まで、黒のスーツ。中のシャツまで黒ときた。にも関わらず、ネクタイは白。

そして、極めつけはこの服装に必然と映えてしまうこの銀髪だ。人目を引かないわけがないのだ。

「源氏名(おなまえ)はなんというのかしら」

「うわわ、ちょっと距離近くないです…か？お姉さん」

情けなくも若干の恐怖から声が震える中、沈黙を破ったのはどこからともなく現れた一人の男性…いや男の子であった。

「ごめんなさい。僕のツレなんです。用事もあるので失礼しますね」

「……！やっさだ！」

"やっさだ"と呼ばれるこの男の子。
彼こそが世に聞く刀剣男士であり、奇しくも深山の近侍となってしまった憐れな…失礼、幸運の持ち主である。

それはともかく、呼び止める女性を振り切り主である深山を連れ出せばある程度歩いたところで歩みを止める彼に首を傾げる深山。ここまできて、状況把握ができないあたり、この主人公、相当な阿呆なのだろう。

素敵な笑顔と共に振り返った近侍…もとい、大和守安定から愛ある拳を受けることとなるのだった。

「ねえ、静稀。何度言えば…いや、何度絡まれればわかるのかな。その格好で街をうろうろするなって言ったよね？」

これが彼らの日常である。

◆