【短編集】お気楽主が今日も手強い【派生作品】 (ページ13)

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10：金平糖ページ13

視点：深山静稀

　場所を１階のカフェに移して、円卓を囲む僕たち。話題をふってくれる先輩に断りをいれて、さっき慌ててしまった"例のモノ"を探す。

「ああ、あった！…ほいっ、先輩にプレゼント！」

「？……っ、こ、これは…！でも何故、静稀くんが…このお店は長崎にしかないはずでは…」

「へへ、内緒」

人差し指を口の前であて、にやりと笑ってみせれば動揺を隠せない先輩。作戦は大成功だ。

実のところ、この綺麗な和紙の包みは長崎にしか出店してない老舗の金平糖屋さん独特のもので見る人が見ればすぐにわかるもの。

もちろん、長崎に行けたわけじゃなくて、今だけ期間限定で銀座に出店してる情報を掴んだからなわけだけど。

なんか、これ言っちゃったら面白くないし、だまっておこ。

「ほ、本当にもらってしまってもいいんでしょうか」

「もちろん。先輩にはいっつもお世話になってるしね、これくらいさせてよ」

「そんな……でも、ありがとうございます。とても嬉しいです」

「へへ。あ、師匠も良かったら。それ三点包みでさ、好きなの選べたんだ」

「え！ぼくまで、いいの？嬉しい、ありがとう」

包みを前ににこにこと笑うふたりを目にすれば心がぽっと温かくなる。早速開けて食べてみようって話しになって、僕たちもいただくことに。

ん？これでよかったのか？

ま、いっか。みんなで食べるお菓子が一番おいしいしな。

「たしか、これが紫陽花で、そんでそっちが菜の花、んで最後が紅葉だったはず！」

「どれも綺麗ですね…迷います、とても。」

「あはは、そんな迷うことないのに。個人的におすすめは紫陽花かな」

指でころころ金平糖を転がしながら話せば、"食べたことあるんですか？"と不思議そうに見つめてくる先輩に首を振る。

さすがに長崎にしかないお店のお菓子だし、甘いものに目がない僕だとしても食べたことはない。

ただ、迷う理由もなかったっていうか。

「ほらだって、この色合いさ、先輩の髪色をグラデーション分けしてパレットに移したみたいじゃん？だから、これしかないと思ったんだよ。綺麗だし」

だから"紅葉"は乱ちゃんの髪色ね、とにししっと笑ってみせれば顔を赤くして俯く先輩に首を傾げる。

「あれ、先輩…照れてる？なぜ？！」

「普通そんなことを言われたらこうなるのが普通というか…ふふ、でも、ありがとうございます。嬉しいです、素直に」

そう笑ってみせる先輩の笑顔がやっぱり僕は好きなんだ。