【短編集】お気楽主が今日も手強い【派生作品】 (ページ12)

今日:4 hit、昨日:0 hit、合計:5,804 hit

09：元気な後輩ページ12

視点：辻澄哉

　業務を終え無事帰還を果たせば、直属の後輩でもあり、大学の後輩でもある友人が目の前にいるのだから驚かないはずもなく、なにかあったのかと一瞬心配になる。

けれど、彼の表情を見ればそれが杞憂だと理解するにはそう時はいらず、待っていてくれたことに御礼を伝えればその場をあとにする。

「すごくにこにこしてたよね。なにかいいことがあったのかな」

「かもしれませんね」

背後で遠慮がちに頭を下げた"彼"の表情を思い出せばなんとなくどういった方向の話しか予想がつく。

けれど、それは乱も理解した上での話しなのだろう。

それにしても、乱からすればそうなったのだとしたら彼の"師匠"として喜ばしいことなのだろうけど、安定くんからすれば複雑な気持ち…といったところでしょうか。

「もしそうだとしたら、少し安定くんと話してみますね」

「ふふ、ならぼくは遠慮なく話しを聞かせてもらおっと」

まだそうと決まったわけでは…と言おうとすれば、なにやらいつもの流れが始まっている二人が映り、思わずくすりと笑ってしまう。

「あるじさん？」

「なんだかおかしくて。良いコンビ、ですよね」

「確かにそうかもしれないけど。忘れてない？…ぼくたちだって負けてないでしょ？」

と首をかしげ微笑んでみせる乱に笑みで返し、二人の元へと歩み寄る。

「お待たせしました。相変わらず仲が良いですね」

「お待たせ！お二人さんっ」

声をかければ、"べ、別に…！"と言いかける安定くんに小さく笑いかけると途中で反論をストップさせるあたり、やはり根は素直な良い子なんだ、と実感する。

「急にごめん、二人とも。でも、なんといいますか…一番最初に報告したかったというか」

そうぽりぽりと頭をかく静稀くんを見る限り、予想は的中したのでしょう。

とりあえず、場所を移すことを提案し館内を歩けば会話に花が咲く。

そういえば書類の提出が残っているけど…うん、あとで集中して片付ければ大丈夫でしょうか。

せっかく待っていてくれたわけですし、なにしろ話しを僕も聞きたいですから。

内心、状況の整理を終わらせれば乱にも通じたようでアイコンタクトで同意を得る。

「お話し聞きましょう。そんなににこにこして、なにか良いことが？」

そう本題を切り出せば"ああ、ちょっと待って"とがさごそと手持ちの鞄を探り出す静稀くんにハテナが浮かぶ。

一体なにを探してるのでしょうか。