【あるカルデアの日常】あるマスターの日常【派生作品】 (ページ31)

今日:3 hit、昨日:2 hit、合計:35,594 hit

□30話　視点:橘樹ページ31

.

そんな溜息をつく俺の隣を颯爽と通り過ぎるエミヤ。

スーツとスーツケースを手に、なにやら所長と話しているようで、おそらく彼が出張の準備をしてくれたのだろう。

「おい、なにを満足そうな顔をしておるのだ」
「ん？いやだって、あの二人ってなんか一緒にいるのが自然っていうかさ。なんかいいコンビって感じ」
「ほぅ。お前、あのような関係(モノ)に焦がれるか」

「だってあれが正に理想じゃん。まっ、でもギルはギルのままでいいよ」
「なにを言っておるのだ、貴様」

「俺、結構ギルのこと気に入ってるのかも？」

なんて笑ってみせる樹を前にし、呆れるギルガメッシュ。
全く、この我(オレ)にどこから目線だ。と思う一方で、悪い気はしないのだから不思議だ。

そんな最中、所長が出立するようで、お土産のリクエストを問えば、なにやら樹もまたお願いしているようであり、願いならば我(オレ)にいえばいいものの、と全くもって理解に苦しむ。

「所長。できたらでいいから、ここのメーカーの茶葉買ってきてほしいんだ。英国なら有名な茶葉なはずなんだけど」
「ん？どれどれ」

俺の端末を覗けば、すぐにわかったのか「嗚呼、ハロッズのアールグレイだね」と微笑んで見せる。

「ちょっと高いけど頼んでもいい？」
「ふふっ、もちろんだよ」

「ありがと。留守中の皆の食生活はエミヤと俺がなんとかするから、気にしないで行ってきてよ」

と、時計塔へと向かう姿が兄とどこか重なる。
そういえば、兄貴は無事忘れ物なく時計塔につけただろうか。

時計塔といえば…アイツ、ちゃんと元気でやってるのかな。
まあ心配するまでもないんだろうけど。

誰かの号令があったのか家具の取り付けや掃除が行われていく様子に気づけば、
朝食はなににすべきか考える。
エミヤは所長となんか話してるし、俺が作るか。と思考を巡らせれば、もうひとりの頼りない大人の元へと足を運ぶ。

体調いまいちのクセに作業に入っているその背中に溜息をつけば、開いている扉に一応ノックをする。すると、少し驚いた様子をみせた瞳と視線を通わせた。

「よぉ、体調どう？」
「うん、お陰様で」

「ご飯、食べれそう？無理そうなら味噌汁だけにしようかなと思って」
「樹くんが作ってくれるのかぃ？手伝おうか」

思ったより元気そうだな。

「いやいいよ。麟湖、誘おうと思ってるから…あ。絶対に覗きにくるなよ？」