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目を覚ますにはまだ早いそんな時分――。
まだ熱を持たない涼やかな風と規則正しい呼吸音。
腕の中で眠る温もりを感じ取り、瞬きを二度。
艶のある漆黒の髪に指を通し、そっとその存在を抱き寄せる。
それはまるで相手の存在を確かめるかのような行為。
男は安堵した。
かつてこぼれ落ちてしまった存在が確かに今ここにいる。
壊れないように、傷つけないように。
それは普段の男からは想像もつかない。
優しい抱擁。
きっとこの先もずっと、目の前で眠る愛おしい存在を素直に甘やかす。
そんな甘い日々は来ないのだろう。
「全くこうして静かに眠っている分には害はないのだがな」
そんな彼特有の笑みをみせ、頬を撫でベットを出る。
海軍大佐として日常を過ごす彼からすれば日常的な起床時間。
最も今日は急遽休暇をとり、司令部に足を運ぶ必要はないためゆっくりできる手筈となっているわけだが。
彼の性格上、生活リズムを崩すというものができず皺１つないシャツへと袖を通し身支度を整え始める。
そして毎朝の習慣となったモーニングコーヒーの習慣。
最も彼は紅茶を嗜む男であったわけだが、それもまた彼女の影響か。
「ん、」
「起きたのか」
「フレンチロースト…？」
「そうだ」
「苦くて飲めない…じゃない…」
「それは残念だったな。俺はエスプレッソしか飲まないからな」
カップを手にベットに座り、エスプレッソをあおる男。
そんな彼を彼女もまた夢現といった様子で見つめていた。
「ねえ、ちょうだい？それ」
「飲めるのか？お前に」
「んっ……うわ、苦いわ…返す…」
この先ずっとこんな穏やかな朝が日常になるのかとふと考えれば、
頬が緩んでしまって仕方ない。
それ程に今、男は"幸福"というものを感じていた。
「クリームをいれればお前でも飲めるかもしれないな」
「貴方が飲めるのなら私だって飲めるようになるわ」
「素直に甘えておけばいいものの。全くもって強情な女だな」
「それを貴方が言うのかしら。そっくりそのままお返しするわ」
そんな彼らの軽口もよろしく、"おはよ"なんて朝の挨拶と共に唇を重ねるふたり。
素っ気ないかと思えば甘く、
軽口を交わし合ったと思えば、愛おしそうに見つめてみたり。
そんな彼ららしい朝を迎えたところで、室内に大きく響くコール音。
静かな朝に似つかわしくないコール音の相手は言うまでもない。
彼女の"父"である。
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湊(プロフ) - ユキさん» 初めまして、コメントいただきありがとうございます。少しでも作品の素晴らしさをお伝えできるよう今後とも頑張らせていただきますので、どうぞよろしくお願い致します。 (2021年10月31日 11時) (
レス) id: ab18fde111 (このIDを非表示/違反報告)
ユキ(プロフ) - 初めまして。素敵なお話をありがとうございます！ (2021年10月30日 13時) (レス) id: fb083d1d07 (このIDを非表示/違反報告)
湊(プロフ) - 小桜さん» そんなそんな。こちらこそお待ちいただけるということ程、本当に心強いことはなくて。こちらこそ、本当にありがとうございます。 (2020年12月27日 20時) (レス) id: ab18fde111 (このIDを非表示/違反報告)
小桜 - 更新ありがとうございます！本当に素敵な作品です！これからも更新待っています!! (2020年12月27日 9時) (レス) id: 67fd5c2fc4 (このIDを非表示/違反報告)
湊(プロフ) - れいさん» 初めまして。あたたかいコメントいただき私も胸がいっぱいです。お手に取っていただき、そして素敵なお言葉をかけてくださり心から感謝を。引き続きお楽しみいただけるよう精一杯頑張らせていただきます。コメントいただきありがとうございました！ (2020年12月27日 9時) (レス) id: 83bbd53189 (このIDを非表示/違反報告)
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