06.林檎さん ページ6
｢めっちゃ混んでんね｣
しんくんが嫌そうな顔をした。
目の前の開いたドアの先には、ギュウギュウ詰めの車内。
｢絶対これAちゃん一人で帰れへんヤツやん！！｣
｢か、帰れるし！｣
｢入った瞬間押し潰されて埋もれるやんか！｣
ハハって笑い声を零しながら、｢ほな行くか、離れんといてや？｣って私の手首を握ったまま電車の方へと歩いていく。
外の世界とは温度が違う、蒸し暑い車内の中に二人で入った。
後ろにサラリーマンが立ってる。タバコの匂いが臭かった。
左横にも、右横にも、仕事終わりのサラリーマンが立っていて、落ち着かなかった。
｢…、こっち、｣
発車の音と共に、しんくんが口を開いた。
動き出した電車。半回転する私の身体。
後ろが壁。目の前に、しんくん。
頭の近くに、しんくんの長い両腕。
｢…え、｣
｢汗臭いかもしれへん、我慢して、｣
｢…え、あ、…、｣
汗臭いなんて言葉が当てはまらないように、しんくんからは柔軟剤の香りがした。
この状況に、距離に、目眩がしそう。
｢っ、…、｣
｢おっ、…っと、｣
急ブレーキが掛かった電車。
守られるように、腕の中にすっぽり収まる私。
ドキドキが最高値に達して、心臓が壊れそう。
｢大丈夫？怪我あらへん？｣
｢…大袈裟！｣
抱きしめるような姿勢のまま、変わることなく耳元で聞こえるしんくんの声に、
私は、笑って返すことで精一杯で、きっと顔は真っ赤で情けない顔をしてたと思う。
｢Aちゃん、チビやなあ？｣
｢っな、！｣
｢怒らんといて！！これぐらいの身長って可愛いやん？｣
褒め言葉やでって言うから、どうしようもなく私の心は踊り出す。
私が可愛いって言われたわけじゃなくて、私の身長が可愛いって言われただけなのに。
｢まーた林檎さんになってん？｣
耳元で聞こえる声がくすぐったくて、照れた顔を隠すように下を向いた。
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みー - こんにちは！ はじめまして とっても面白いです！続きめっちゃ気になります！頑張ってください！ (2017年11月27日 6時) (
レス) id: 16d5d8deee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：めいと | 作成日時：2017年11月19日 23時
