05.イエローライン《11.26.UP》 ページ5
それから他愛もないことを話した。
いつも莉菜と帰っている同じ道のはずなのに、距離は変わってないはずなのに、
あっという間に駅に着いた。
｢どっちの電車乗るん？｣
｢あ、1番線…、｣
｢あーじゃあ、ここでバイバイやなあ｣
俺2番線って2番線の看板を指さす。
夢のような時間の終わりの合図だった。
｢じゃあ、…し、んくん、またね｣
また明日も話せますように。
また、｢しんくん｣って呼んで、｢Aちゃん｣って呼ばれて。
他愛のないことを話せますように。
触れたり離れたりを繰り返してた肩を、しんくんから離す。
背中を向けた。これ以上いると、好きが溢れて苦しくなる。
・
・
ーー...｢…って、暗いのに女の子1人で帰せるわけあらへんやんか｣
・
・
大きな手が、私の手首に触れて包み込む。
しんくんの体温が伝わって、息をするのもしんどいぐらいにドキドキする。
｢…だ、いじょ、う、ぶだよ…、？｣
｢分からへんよ、何があるか。Aちゃんになんかあったら嫌や｣
｢いや、…でもしんくん遠回り、…｣
｢別になんてことあらへんで｣
引かないと言わんばかりに、しんくんの私の手首を掴む力が強くなる。
同時に、離れた分の距離を埋めるように引き寄せられた。
｢もうAちゃん林檎さんやん｣
フハって吹き出すように笑ったしんくんが、私の紅く染まった顔を覗き込む。
また、顔中に熱が集まって、より紅に染まる。
｢か、からかわないでよ！｣
私は目の前にある綺麗な瞳を見れずに、呟く。
『1番線に電車が参ります。黄色い線の内側でお待ちください』
私の恋に、黄色い線はなかった。
いや、あったのかもしれない。
気付かずに、足を踏み入れて抜け出せなくなってしまった。
｢寒いなあ？｣
｢マフラーしてないの？｣
｢今日に限って家に忘れてもうた｣
しんくんが笑った証に、白い吐息が宙を舞った。
*
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 51人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
みー - こんにちは！ はじめまして とっても面白いです！続きめっちゃ気になります！頑張ってください！ (2017年11月27日 6時) (
レス) id: 16d5d8deee (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：めいと | 作成日時：2017年11月19日 23時
