川西 ページ47
「やから違うって言うてるやろ」
「なにがどう違うの！」
「もうA、冷静に話せへんやん」
賢志郎さんが大きなため息をつく
私の中で何かが崩れていくのがわかった
「もういい」
後ろから賢志郎さんに呼び止められてるけど
それを振り切って家から出た
「あ、スマホ置いてきちゃった」
怒りに任せて出てきてしまったものだから
身なりも整ってない
しかも今日に限って一段と冷える
冷静になんてなれるわけない
今まで元カノの話なんか聞いたことなかったのに
たまたまテレビを見ていたらその話をしてて
すごくリアルで(それもそうなんだけど)
話を聞いてると私とは正反対の綺麗系お姉さん
もちろんスタイル抜群
私なんか、、、
「もう考えるのやめよ」
惨めすぎて切なくなる
「A！」
大きな声で名前を呼ばれ肩がビクッと震える
声のする方は振り返ると
そこには息を切らした賢志郎さんの姿が
反射的に逃げようとする私を捕まえて
そのまま抱きしめた
「、ちょ、、逃げんといて」
「このままでええから聞いてほしい
芸人やってる上でどうしても話をする機会が増える
ちゃんと放送される前にAに言うべきやった
そこはほんまにごめん」
「､､､」
「それが耐えられないって言うのなら
俺は無理に一緒にいてくれとは言わへん」
「それって別れる、、ってこと？」
「俺やってそうなったら嫌や
けどAを傷つけ続けるんやったら
そっちの方が嫌や」
「嫌よ、私、賢志郎さんと別れたくない
ごめんなさい。私どうしたら、、、」
少しパニックになってしまった私を
落ち着かせるよう、背中をさすってくれる
「わかった。Aの気持ちはわかった
やったら俺のこと信頼してほしいな」
「普段気持ち伝えてるわけでもないから
不安にさせてるところもあるやろうけど
俺はAがおるから頑張れてるし
ほんまに愛してんねん」
「ふっ、、っ」
「やから1人で泣くのはやめてな
こうやって俺がおるときだけにして」
頷くことしかできないけど
よしよし、と頭を撫でてくれた
「ほんなら帰ろ、体冷えてもうたな」
「ごめんね、賢志郎さん」
「ええよ、その代わり帰ったら
お風呂入ろうな」
「うん」
「え、ええの？」
「うん」
「ほんなら早く帰ろ」
足取りが軽くなる彼を見て
信じてみようと決意した
end
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作者名：いたちっこ | 作成日時：2022年10月20日 17時
