リリー ページ43
寒さが一段と厳しくなってきた12月
「A！まだ終わらない？」
「すみません、もう少しで終わるかと」
「OK、それならよろしくね」
「Aさん、小道具のチェックお願いします」
「わかった！これはあっちにお願い」
「わかりました！」
中堅の立場になり初めての年末
用意するものから後輩のチェックまで
想像以上に大変だけど
弱音を吐いてる時間なんてない
次の現場に移動する前に
大部屋で道具確認しないと
「Aちゃん、俺とのデートの約束は？」
「わかりま、、え！？」
「おしいなぁ、もうちょっとやったのに」
振り返るとリリーさんがいた
「もうリリーさんはいつも、、、」
「やってこうでもせえへんと口聞いてくれんやん」
「突然すぎるんです！
別現場いくのでこれで失礼します」
リリーさんに背を向けて歩き出すけど
腕を強く引っ張られバランスを崩す
「あ、ちょっ、、」
「おわ、あぶなっ」
倒れたはずなのに痛くない
「大丈夫か？」
「はい、なんとか、、」
「ほんならよかった、、、いたっ」
「え、リリーさん大丈夫ですか！？」
リリーさんは足首を捻ってしまったよう
立つこともままならない
「大丈夫や、急に腕引いてごめんな」
どう見ても大丈夫そうじゃない
まだ少し時間がある
「ここで待っててください！」
部屋を出て近くの救護室から
手当に必要なものを持って部屋へと戻る
「とりあえず椅子に座りますよ？」
靴下を脱ぐと少し熱を帯びている足首
「固定しますね」
「ほんま大丈夫やから」
「いいから、黙って！」
私が強く言ったものだから大人しくなるリリーさん
足首にテーピングを貼りその上から湿布と
包帯を巻いていく
「ずいぶん手際ええねんな」
「学生時代によく怪我してたので」
できましたよ！とリリーさんを見上げると
バチっと目が合う
なんだか恥ずかしくてすぐ逸らしたけど
リリーさんもしばらく黙ったままだった
「それじゃ、私行きますね
足首、怪我させてしまって本当にすみませんでした
湿布だけはこまめに変えてくださいね」
「おん、ありがとうな」
それじゃ、と部屋を出ようとすると
「Aちゃん」
「俺湿布とかようわからんから
仕事終わったらここまできてほしい」
渡されたメモを受け取り次の現場へと急いだ
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作者名：いたちっこ | 作成日時：2022年10月20日 17時
