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『アンタ、荷物は最小限にしなさいよ』
「わかってるって」
この街にいるのも後数日
春からは新しい場所で頑張っていく
『こんなマフラーしてるところ見たことない』
「あ！それ置いといて！」
『えぇ〜、使わないんならちょうだいよ』
「いやいやたまに使ってるから」
織山に渡すはずだったマフラーをお母さんに掘り出されてしまった
ラッピングから出して自分のものにしようとしたけど、何故だかそんな気にならなくて結局そのまま寝かせていた
久しぶりにみたその顔はなんだか寂しげに見えた
物に顔なんてあんのかって感じだけど
「……はあ〜」
ため息をつきながら段ボールに入れる
あっちではいい恋愛ができますようにという願いを込めて
荷造りを終えた頃、ケータイを手に取ってSNSを開く
流すようにストーリーを見るとピアスを開けたり、髪色を変えたりみんな羽を伸ばしていた
「上がってるわけないか、」
もしかして織山も、と思ったけれどもちろん上がってなかった
元々そんなに更新する方じゃないしな
それと同時に織山が自分の脳内に常駐することに対して疑問が生まれた
このまま何も進展なさそうなのに、あいつの言葉の通り頭から離れなくなってしまった自分が滑稽で悔しい
「……これも、じゃん」
机の上に綺麗に飾られたブレスレット
マフラーは自分で買ったからまだしも、こっちはあいつから貰ったから余計に持っていったら忘れられなくなりそうだ
『終わったー？』
「ぼちぼち」
『もう、ぼちぼちじゃなくて！業者さん明日にはくるんだからね！』
「もう少しで終わるから！」
18年間生まれ育った街を離れて一人で新しい場所で生きていくのはやはり緊張する反面寂しさもある
なんだか思い出に浸りたくて卒業ソングを流しながらみんなと撮った写真や、貰った手紙、お揃いで買った物とか全てを一つ一つ眺めた
檜山くんに「高校行ってもよろしく！」と寄せ書きに書いてもらった中三の卒業式も、
湧を追っかけて「A！」と呼んでもらえるだけで喜んでた一年の春も、
深田先輩と柚月が付き合ってることにびっくりした二年の秋も、
高校生活最後の夏祭りも我慢して家に篭って勉強した今年の夏も、
織山に初めて振られたあの冬も、
全部全部忘れられない思い出となった
これもいつか笑い話となるんだろうか
--第一章 終--
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ぬ(プロフ) - 大矢さん» そう言っていただけるとは思わなくてびっくりしています(笑)ありがとうございます、頑張りますので引き続きよろしくお願いします。 (2021年2月6日 11時) (
レス) id: 5d74ab8973 (このIDを非表示/違反報告)
大矢 - 素敵な作品で、気がつけば一気に読んでいました！途中から涙が止まりませんでした。素敵な作品に出会えて嬉しいです。続きを楽しみにしています！ (2020年12月14日 6時) (レス) id: adf41a3acd (このIDを非表示/違反報告)
ぬ(プロフ) - あーちさん コメントありがとうございます。嬉しいです！ (2020年12月12日 3時) (レス) id: 5d74ab8973 (このIDを非表示/違反報告)
あーち - 続きがすごく楽しみです！！ (2020年12月6日 1時) (レス) id: 0545fdce9b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぬ | 作成日時：2020年11月19日 0時
