short story for･･･ (ページ2)

今日:19 hit、昨日:3 hit、合計:75,650 hit

いい加減／尾崎世界観(クリープハイプ) ページ2

「♪～」

お風呂から上がるとリビングから聴き慣れた歌声が聴こえてきた。

「尾崎、来てたんだ」

「おぅ、尾崎来てるよ」

勝手に私のアコースティックギターを爪弾く尾崎は決して彼氏ではない。幼なじみだ。

たまにこうしてここに来て勝手に帰っていく。
友達以上恋人未満という表現が私達にはちょうどいい。

「酒買ってきたから飲もうよ。ほら、Aが好きなヤツ」

「ありがとう、尾崎」

「なぁ、そろそろその"尾崎"呼び辞めろよ。俺の方が年上なんだぞ」

「1ヶ月と4日ね」

いつからか私は尾崎の事を尾崎と呼ぶようになった。

何故だかは分からないが気づいた時には尾崎は尾崎だった。

「たまにはさ、下の名前で呼んでよA？」

「世界観」

「おい」

2人で酒を飲みながらこんな掛け合いをしている時間がとても楽しい。

「ずっと、こうしてたいな」

「えっ？」

「えっ？」

まさか、思ったことが口に出ていた。

「いや、違う！これは！断じて違う！」

必死に言い訳をする私を尾崎はただじっと見つめていた。

「な、何よ」

「Aさ、いい加減気づいてくれよな」

「何に？」

尾崎はテーブルの上に酒をトンと置いた。

「俺がAの事好きだって」

尾崎は私の事が好き？

いつもくだらない話で盛り上がって女子力の欠片もないって言っている私を？

「冗談やめてよね、酔ってるの？」

「酔ってない。ずっと好きだった。子供の頃からずっと」

ひねくれている彼から出た素直な告白。

「私も尾崎が好き」

「そこは尾崎じゃないだろ」

「･･････すけ」

「ん？」

「祐介！」

「よく出来ました」

尾崎はニッコリと笑いながら私の頭をなでた。

「これからは下の名前で呼んでね」

「うん」

きっといままで尾崎って呼んでいたのはただ素直になれなかったからなのかもしれない。

彼の真似をしてこれからは少し素直になってみよう。

―――――――――――――――――――――――
「もう一回呼んで」
「祐介」
「そそるねぇ」