ピエロの涙8

episode400 ページ50

「さっきから話を聞いてると憶測ばっかりじゃない？その口ぶりからすると、君とかは俺がAを好きとでも思っているの？」


縦にも横にも首を振らず、鋭い視線を真一に投げる数人。


「仮にみんながそう思ってたとして、俺がそんな事言ったことあった？"中島くんと深瀬くんどっちが好きかなんて知らないけどね"…だっけ？そりゃそうだよね。知るわけないよね。だってAは俺と深瀬のどちらかを好きなんて君らに言ったことなんて一度もないはずだから」


真一は本当に頭が良いなと感心させられるばかりだ。学力的な意味だけじゃなく、頭の回転も早い。
実際私は慧のことが好きだ。だけど、それが周りに知れ渡ったら嫌だろうと、そういうわけで私を養護しつつ、私が慧を好き、というその疑惑も払拭してくれたのかもしれない。咄嗟でそこまで考えて論理的に言葉を並べる真一には尊敬するしかない。
真一は続ける。


「この際、誰が俺を好きとか、誰が深瀬を好きとかは関係ないよ。そのみんなの思っていることが事実かは別として、たかが憶測だけで、人を傷つけるようなことを言うのはどうかと思うな」


あくまで冷静に、波風立てず
淡々と真一が言葉を発する。


「そもそもさ、俺にしろ、深瀬にしろ
そんな影で人の悪口を言うような女の子のことを好きだと思う？」



この言葉が、決め手となった。


「今の話から考えるに、少なくとも君らは俺に対して好意的な印象を持ってくれてる…便宜上好いてくれてるって言わせてもらうけど、そういうふうに思ってくれてるって勝手に解釈させてもらったんだけど、"Aと仲の良い俺"のことは否定するんだね？それって本当に俺のことが好きなの？」


好きな人の周りのものは多くは好きになれないにしろ否定はあまりしないものじゃない？


真一の言葉に言い返す人間はもう、いない。

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