episode355 ページ5
「…慧」
隣の慧に声をかけると、慧はもうさっそく自分のコーヒーを開けて飲んでいた。
「…缶、開かない…」
『あー…かして』
時間も時間なせいか、少し眠たそうに言った慧は、
片方の手ではコーヒーを飲みながら、
涼しい顔でもう片方の手だけで私の缶を開けた。
『…ん』
「…ありがとう」
私はなかなか開けられなくてうんうん唸った缶を
慧はものの数秒で開けてしまった。しかも片手で。
こういうところ、男の子だなあ、と感じる。
とろけるように甘いココアを少しずつ飲みながら、慧に聞く。
「さっき何買ったの？」
『肉まん』
「肉まん？」
慧はちら、と私を横目で見てから
『…食べる？』
ごそごそと袋からそれを取り出して、肉まん特有の白い紙袋を開いた。
すると白い湯気が濛々と立ち込めてきて、ふわりと美味しそうなにおいがしてくる。
慧は、白くて丸くて、ふわふわしたそれを
そっと掴んで、優しく丁寧に半分に割って、私に渡してくれた。
二人で一緒に口に運んで唸る。
「美味しいね」
『うん、美味しい』
別に特別なんかではない。
ただの、そこら辺の肉まんは
高校生でも気軽に手を出せてしまえるほどの安物で。
でも、その安物を二人で分け合って、食べて、
美味しいね、って笑いあうことがどういうわけかすごく幸せで
この瞬間がどうしようもなく愛しくて。嬉しくて。
ねぇ、慧
慧は、こんな何気ない
ちっぽけな幸せでさえも、
望んではいけないと思っているの？
慧、私知ってるよ
慧が心の中で苦しんでること。
きっと、今日話したことが全てではないんでしょう？
慧、どうしたら君は
心から笑ってくれるかな。
『そろそろ帰ろうか』
「うん」
慧がもう一度手を差し出してきて不器用に
『…もう一回、手、良い？』
というから私が頷き返すと
缶なんて余裕で片手で開けてしまえるほどの大きな男の子の手が
また私の手を包む。
あたたかい。
真っ白な朝が
すぐそこまで私たちを迎えに来ていた
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真冬のひまわり(氷華)(プロフ) - 抹茶好きの茉莉花さん» 茉莉花さん、おひさしぶりです！いつも読んでいただきありがとうございます！まだまだ終わる気配もありませんが、御付き合いいだけると嬉しいです！登場人物が増え、混乱するかもしれませんが、すみません。 (2016年9月25日 21時) (
レス) id: 8ad18557ee (このIDを非表示/違反報告)
抹茶好きの茉莉花(プロフ) - 前回茉莉花という名前でコメントした者です。ピエロの涙が更新される度に楽しく読ませていただいてます(*^^*)また新たな登場人物が出てきてドキドキしてます…。これからも更新頑張ってください。応援してます！ (2016年9月24日 14時) (レス) id: aa09b11676 (このIDを非表示/違反報告)
真冬のひまわり(氷華)(プロフ) - いちごさん» お久しぶりです！最近いちごさんがいらっしゃらないので、お忙しいのかなー、なんて思ってました。短くまとめることが出来ずにだらだら書いてしまっているだけなので、そんな風に言っていただけて嬉しいです！これからもたまにコメントいただけると嬉しいです！ (2016年9月20日 20時) (レス) id: 8ad18557ee (このIDを非表示/違反報告)
いちご - お久しぶりです。行事が重なったり、夏休みがハードスケジュールでなかなかこちらに来ることができませんでした。今やっと7が読み終わり8を読み始めたところです。長く続けられるということはすごいことだと思います。これからも楽しみに読みますね。 (2016年9月20日 17時) (レス) id: 318aaa198e (このIDを非表示/違反報告)
真冬のひまわり(氷華)(プロフ) - ニカちゃん大好きさん» いつもコメントありがとうございます！やっと深瀬さんが動き出そうとしています、あたたかく見守ってあげてください……(笑) (2016年9月14日 20時) (レス) id: 8ad18557ee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：真冬のひまわり | 作成日時：2016年8月15日 9時
