episode273 ページ23
「……ごめん」
「えっ？」
真一の吐息のような声がした。
次の瞬間、
真一のにおいに包まれた。
ちっちゃい頃から、感じてきた、におい。
良いにおい。優しいにおい。
私は突然のことに頭が追いつかず
後ろからそっと抱きしめれているということに気づくのに数秒を要した。
「えっ、真一…？」
「…」
どうしたの？と聞いても
真一は黙り込んで、何も言わない。
「ねぇ、真一？」
「…」
「どうしたの？」
「……」
私のお腹のあたりに回る手を叩いてみたりする。
「ねぇ」
「…って」
「えっ？」
なんて言ったの？
振り向こうとすると
きゅっ、と微かに私の身体に回る腕の力が強まる。
「…黙って」
掠れた、吐息混じりの
小さな小さな声だった。
「真一…？」
「…ごめん、良いから黙ってて」
「でも……」
真一は、今にも消えそうな
空気に溶けていきそうな掠れた声で私を呼んで
抱きしめる。
肩甲骨のあたりに額をのせるから
髪が首筋に触れてくすぐったい。
「何？そんなに嫌？」
「そうじゃ…ないけど」
「良いでしょ。これくらい。
昔はこんなこといつもしてたんだから」
私のさっきの言葉
そっくりそのまま返されてしまった。
私は何も言えなくなってしまう。
真一は、深く静かに呼吸を繰り返して
ぽつり、ぽつりと呟く。
「……ごめん、A。でも、今日だけだから」
きゅうっ、とほんの少し強くなる腕の力。
弱々しい、力と声。
「ねぇ、A」
「…ん？」
「Aは、大切…だから、笑ってて欲しい」
「ん？うん」
真一の手に、自分の手を重ねるとその手がぎゅっと強張る。
「……いつまでも、あると思っちゃダメだよ」
「何を？」
「なんでも。大切なものならなんでも。ずっと自分のそばにあると思っちゃダメ。本当に大切なら、ちゃんと掴んでいて」
どうして急にそんなことを言い出したんだろう、と頭の中がはてなでいっぱいになると同時にその言葉の意味はわかる気がした。
「俺はAに笑ってて欲しいからさ。いつでも俺はAの味方だよ」
「ありがとう」
「だから、頑張って。失敗を恐れる気持ちはわかるけど、きっと叶うから。だから、想い、伝えてみなよ」
深瀬に。はっきりとした声がぼんやりとした空気の中で浮き彫りになって強調される。
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真冬のひまわり(氷華)(プロフ) - 抹茶好きの茉莉花さん» 茉莉花さん、おひさしぶりです！いつも読んでいただきありがとうございます！まだまだ終わる気配もありませんが、御付き合いいだけると嬉しいです！登場人物が増え、混乱するかもしれませんが、すみません。 (2016年9月25日 21時) (
レス) id: 8ad18557ee (このIDを非表示/違反報告)
抹茶好きの茉莉花(プロフ) - 前回茉莉花という名前でコメントした者です。ピエロの涙が更新される度に楽しく読ませていただいてます(*^^*)また新たな登場人物が出てきてドキドキしてます…。これからも更新頑張ってください。応援してます！ (2016年9月24日 14時) (レス) id: aa09b11676 (このIDを非表示/違反報告)
真冬のひまわり(氷華)(プロフ) - いちごさん» お久しぶりです！最近いちごさんがいらっしゃらないので、お忙しいのかなー、なんて思ってました。短くまとめることが出来ずにだらだら書いてしまっているだけなので、そんな風に言っていただけて嬉しいです！これからもたまにコメントいただけると嬉しいです！ (2016年9月20日 20時) (レス) id: 8ad18557ee (このIDを非表示/違反報告)
いちご - お久しぶりです。行事が重なったり、夏休みがハードスケジュールでなかなかこちらに来ることができませんでした。今やっと7が読み終わり8を読み始めたところです。長く続けられるということはすごいことだと思います。これからも楽しみに読みますね。 (2016年9月20日 17時) (レス) id: 318aaa198e (このIDを非表示/違反報告)
真冬のひまわり(氷華)(プロフ) - ニカちゃん大好きさん» いつもコメントありがとうございます！やっと深瀬さんが動き出そうとしています、あたたかく見守ってあげてください……(笑) (2016年9月14日 20時) (レス) id: 8ad18557ee (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：真冬のひまわり | 作成日時：2016年8月15日 9時
