ピエロの涙8

episode368 ページ18

さすが元日なだけあって、
やっぱり、どこもかしこも人で溢れていた。
ショッピングモールに行って福袋を買ったり
楽器屋さんや本屋さんを回ったりしているうちに
冬の日はあっという間に暮れて
真一の家に帰ることになった。



『それじゃあ一日、お世話になりました』


慧は、お正月で妹さんたちが家に帰ってきているということで、出来るだけ早く帰ってくるように、とお母さんにも催促されたらしく
私や彩織よりも一足先に帰っていった。



「じゃあ、私たちも支度始めよっか」

「じゃあ俺も部屋片付けようかな」


私はお隣さんに住んでいるわけだし、
多少のんびり支度をして、
適当な時間になれば帰れば良いかと思っていたけど
彩織がそういうから私も支度に取り掛かる。
私と彩織は真一のお姉さんの部屋へ、真一は隣の真一の部屋へ。


「そういえば、A」


鞄に服や諸々の荷物を詰めながら
彩織が言う。


「昨夜は何をしてたの？」

「昨夜？」

「夜中。部屋出て行ったでしょ」


何で知ってるんだ。
と思うと同時に
彩織は不眠症だし、あの時起きていたとしても不思議ではないと瞬時に納得する。


「慧が外に出て行くのが見えたの。だから追いかけた」

「へぇ、楽しかった？」

「うん！風が気持ち良くてね〜、星が綺麗で！
冬の夜って良いよなぁ、って思った！
あのね、慧星に詳しくてね、私の知らない星座もたくさん知っててさー
あ！あと肉まんも美味しかったなぁ」

「はいはい、それで？」


彩織がやけに優しい目と、声で言うから
そこで初めて
はっ、と気がつく。
喋りすぎた。

本当はもっと喋りたいけど、やめておこう。
と、口をおさえた。
慧が泣いた事は、
当然、言わないでおこう。


「ご、ごめんね。喋りすぎて…」

「良いよ、でもさ
昨日今日と二人、やけに仲良かったよね。
朝、手繋いで寝てると思ったら、
ちょくちょく手繋いだり、近くにいたり、したじゃない？」

「そ、そうかなぁ…」


やっぱり、周りから見たら
結構バレバレなんだろうか。
彩織が気づいているという事は
きっと真一も気づいてる。
真一はお兄ちゃんみたいな感じだから
家族には見せていない一面を見られてしまったような
そんな気恥しささえある。

お父さんに、男友達と遊びに行っているところを見られたみたいな。


「だから私、思ったの。
昨夜なんかあったのかなー、って」

「なんか、って？」

「例えば、告白。とか？」

「はぁ？！」


私は、それまで動かしていた手を止め、
視線を完全に彩織に向ける。


「二人、もう付き合ってるの？」


彩織は、こてんと首を傾げた。

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