ピエロの涙8

episode367 ページ17

「一回100円って書いてある」


おみくじの箱を前にして
彩織が呟いた。


『なかじん金かしてー』

「えー、持ってきてないの？」


わいわい騒ぎながら
全部で400円を、お金を入れる穴に入れて
せーのでくじを引いた。

少しだけドキドキしながら
各々くじを開く。


「あ、私中吉だ」

「お、彩織ちゃん、奇遇だね」


俺も俺もー
と楽しそうに言う真一と彩織を横目に見てから
自分のくじに視線を落とす。


まさに、ガーン という効果音が相応しいほどのショックを受ける。


『A、どうだった？』


ぼんやりと私が手に持つくじを覗き込む慧に答える。


「大凶だった……」

『それは残念』

「慧は？」


慧の返答を聞くより早く
慧の手の中を覗き込んで、
あっと声を上げてしまった。


「大吉だ！」

『うん』


興味なさそうに頷く慧とは対照的に誇らしげにあるその二文字。
私とは正反対の大吉だ。
新年早々なんて冴え先の悪い…
書いてあることも散々だ。

・失せ物
出でず
・恋愛
悪し

まあ、他にも大体
良くない雰囲気の言葉のオンパレード。


「良いなぁ…」


思わず呟くと慧はしれっと


『交換してあげよっか？』


と言う。


「えっ、それ意味あるの？」

『いや、知らないけど』


とにかく、と慧は私の手に大吉のくじを持たせて、
私から大凶のくじを奪い取って顔の横でひらひらとさせ、笑う。


『まあ、俺みたいな人間には大凶がお似合いってことで』


大吉のくじの
恋愛の場所には
こんなことが書いてあった。


"信じなさい。信じるが吉"


ふふ、と笑みが零れた。

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