ピエロの涙8

episode366 ページ16

慧が、真一に電話をして連絡を取ってくれた。


『あ、もしもしなかじん？あー、Aいたよ』


機械音に少し歪んだ真一の声が微かに聞こえてくる。


『え？何？聞こえない。なかじん今どこ？』


周りが騒がしく、そのうえ電波も悪いのか、少し顔をしかめてきょろきょろとあちこちを見ながら歩き出す。
オッケー、今から行くよと
しばらくすると慧は通話を止めて、
ケータイをポケットにしまった。


『なかじん、近くにいるって』

「本当？」

『うん。そんな心配そうな顔しなくても良いよ。もうはぐれたりしないから』


私はそんなに情けない顔をしていたのだろうか。
慧は、一瞬だけ私の頭を撫でて前を見た。




「A！深瀬！」


程なくして、真一と、彩織と合流することが出来た。
慧はその瞬間、私の腕を強く掴んでくれていたその手を離す。


「A、大丈夫だった？」

「うん、ごめんね」

「いいのいいの、深瀬もありがとうね。
じゃあ、行こうか」


今度こそ離れないように気をつけながら、
初詣らしくお参りをした。
お賽銭はほんの少しだけ奮発した。

今年はたくさん慧の笑顔が見られますように。
みんなで仲良くいられますように。
あわよくば、慧とはもう少し仲良くなれますように。

こういうときのお参りってお願いしても良いのかな？
そんなことを思いながらも、たくさん欲張りにお願いしてしまった。


『ずいぶん長いこと手を合わせてたけど、何考えてたの』

「秘密」

『教えてよ』


えー？どうしようかなー
そんなことを言いながらニヤニヤしてみる。


「慧とずっと一緒にいられますように、ってお願いしたよ」

『…？！』


慧は少し驚いた顔をして、おろおろして
目を伏せた。


『…嘘だ』

「こんなときに嘘ついてどうするのさ」


あはは、と笑ってたのは私だけだった。
そんなに私と一緒にいるのが嫌？
そうじゃないなら
どうしてそんな

哀しそうな顔をするの。





無事、お参りを終わらせた私たちは
おみくじをひこうということになった。

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