今宵、貴方と最後の晩餐を (ページ9)

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所詮私は無力で、ただの探偵ごっこだと笑われるとわかっている。
だけど、いてもたってもいられなくて
私は、いろんな人に話を聞いて情報を集めようと思った。

まず、孤児院に帰って、管理人の部屋に入る。
管理人は、いい年をした、50過ぎのオッサンだ。部屋に行けば、新聞の一つでもあると思ったからだ。

管理人は出かけていた。
毎日の読み終わった新聞が山積みになったところを漁る。

山の上の方に、美雨が行方不明になった時の新聞があった。
他にも誘拐事件について書かれた記事はないだろうかともっと漁る。
気づくとかなりの時間が経ってた。
帰ってきたころは空はまだ橙色だったのに、今じゃすっかり紺色だ。
床に散らばった新聞たちをかき集めていると、

「あんた何してんの」

常に、聞きたくない声ナンバーワンの声が飛んできた。
案の定、声の主は有沙だった。

「新聞…探してて」

「新聞？新聞なんて何するのよ」

勉強するわけでもないんでしょう？と鼻で笑われる。

「誘拐事件のこと、調べたくて…。美雨が、行方不明だから…」

有沙は興味がなさそうにしていたと思えば、私の口から美雨の名前が飛び出した途端、吹き出して、げらげらと笑った。

「何それ、新聞を読んでどうするつもり？」

「心配だから…手がかり…」

有沙はひとしきり笑ったと思えば
バッカみたい、と吐き捨てた。

「そんなことして意味あるわけないじゃない。それにあいつ、いじめられてたんでしょ？いい気味よ」

そういえば、有沙は美雨が嫌いだったなと今更ながら思い出す。

「…美雨のこと、悪く言わないで」

有沙は、ものすごい剣幕で
はぁ？と言って、つかつかとこっちに歩み寄ってきて、私の髪の毛をつかんだ。

「…いっ、痛っ」

「何？あんた私に口答えするの？」

有沙に口答えをすると、殴られる。
有沙とは同い年だけれど、運動神経が悪く、力もない私とは反対に、
有沙は女子の中でもかなり力が強い方だし、何より根っからのいじめっ子気質なので
私なんかじゃ歯が立たない。
だから、基本的に私は有沙に逆らわない。でも、今回ばっかりは別だ。

「美雨のこと、悪く言ったら許さない」

「何？正義のヒーローにでもなったつもり？
私の前でそいつの名前口にすんじゃねぇよ」

そうして、飛んでくる罵声。それと、拳。
痛くて、痛くて
だけど耐える。
美雨の悪口を言われるよりはましだから。